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退職時の社会保険手続きのポイント
● 退職時の手続きの遅延は、トラブルのもと
  退職時の手続きに関して、企業と従業員側でちょっとしたトラブルになることが増えている。例えば、従業員から「離職票が届かない」とか「社会保険の喪失手続きがされていないので任意継続で加入できない」などが一例であるが、他にもさまざまな種類のトラブルがある。トラブルを回避するためには、その手続きの期限を常に意識して業務に取り組むことが必要である。今回は退職に関する社会保険関連の手続きに関してその期限を含めたポイントについて簡単にまとめておくので、復習を兼ねて確認していただきたい。
● 雇用保険の喪失手続きは、退職後10日以内に
  退職する際には、雇用保険の喪失手続きを行わなければならないが、その手続きは、雇用保険法により退職した日の翌日から10日以内に手続きすることが定められている。雇用保険の喪失は、そのほとんどが離職票を発行することになるが、次の職場が決まっていない従業員は一日でも早く離職票を発行してもらって、ハローワーク(職業安定所)で求職の申込みの手続きをしたいはずである。
  実際には、賃金の締切日の関係で賃金が確定しないので発行が少し遅れたりすることもあるが、それでも離職票が1ヶ月経っても届かないというようなことがあれば、トラブルに発展してもおかしくない。
  過去の例からいえば、従業員側から、失業給付を受けるのが遅れて生活に支障が出て損害を被ったとして、その補填を要求された例もあったので十分注意したいところである。
  繰り返しになるが、雇用保険の喪失手続きは、退職日の翌日から可能となるので、余裕をもって書類を作成して、すぐに手続きできるように準備しておきたい。
● 社会保険の喪失手続きは、喪失日から5日以内に
  企業は、従業員の退職により健康保険及び厚生年金保険の資格を喪失する場合、被保険者資格喪失届を提出しなければならないが、その期限は退職の翌日から5日以内となっている。なお被保険者の資格を喪失する日とは、退職日の翌日となるので、社会保険の喪失届を作成する際にはあわせて注意しておきたい。
  また、従業員が健康保険を任意継続しようとする場合、企業側の喪失手続きが済んでいないと、従業員本人が申請しても原則として健康保険組合や協会けんぽでは処理をすすめることができない。任意継続加入は、従業員自身が喪失日から20日以内に手続きをしなければ絶対に認められず、喪失手続きの遅延は、大きなトラブルになる可能性がある。
  退職者の中には、退職理由が解雇あるいは退職勧奨の場合もあり、複雑な思いの人もいるので、実務担当者は相手の気持ちになって丁寧に対応し、速やかに手続きするように心掛けたいところである。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.03.25
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