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会社移転に伴う源泉徴収事務の混乱を解消
● 6月以降の利子等の納税地は「移転後の事務所の所在地」
  これまで会社移転に伴い源泉所得税の取扱いで少なからぬ混乱が生じていたが、平成25年度税制改正によってこの状況が解消されそうだ。
  具体的には、利子等に係る源泉所得税の納税地について、利子等の支払者の事務所が移転した場合は、その移転前に支払った利子等の納税地は、「移転後の事務所の所在地」とされたことだ。この改正は、平成25年6月1日以後に利子等に係る源泉所得税を納付する場合について適用される。
  実を言えば、給与等に対する源泉所得税の納税地についても、つい最近まで、「その支払日における支払事務所の所在地」とされていた。つまり、事業所を移転しても、移転前の支払いに対する源泉所得税の納税地は、引き続き移転前の事業所の所在地とされていた。しかし、これでは、移転前の支払いに対する源泉所得税の納税地と、移転後の支払いに対する源泉所得税の納税地が異なってしまい、会社の事務処理が非常に煩雑となる。
● 会社移転すると所得の種類によって納税地が異なっていた!
  そこで、平成23年度税制改正において、源泉所得税の納税地について、「給与等の支払事務所の移転があった場合には、移転前の支払いに対する源泉所得税の納税地についても、移転後の事業所の所在地とすること」とされた。納税者の利便性や税務署の事務の迅速化などの観点から見直されたもので、この改正は平成24年1月1日以後に源泉所得税を納付する場合からすでに適用されている。
  ところが、これによってまた新たな問題が発生した。公社債利子や配当など給与等以外の所得については、いまだにそれを支払った時の所在地が納税地とされているため、事業所を移転した場合、所得の種類によって納税地が異なるという妙な現象が起きてしまっていたのだ。
  こうした移転に絡む落とし穴については、国税当局も問題視していたようで、平成25年度税制改正に向けて解決策を提案していた模様だ。
  その結果、平成25年度改正において、「給与等以外の源泉所得税の納税地についても、移転前に支払われた源泉所得税に係る納税地については、移転後の所在地とする」とされた。つまり、「給与等以外の所得」についても、移転後の所在地を納税地とすることで統一を図ったわけだ。
  これによって、源泉所得税の事務手続きが格段にしやすくなるため、会社移転での源泉徴収事務の混乱の解消が期待される。
※  「平成25年度税制改正法案」については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2013.03.25
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