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価格転嫁対策など消費税転嫁円滑化法案を閣議決定
● 大手小売事業者が価格転嫁を拒否することを禁止
  政府は3月22日、消費税率引上げを踏まえ、商品やサービスの増税分の価格転嫁の円滑化を図る「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法案」(消費税転嫁円滑化法案)を閣議決定した。
  大手の小売事業者が中小納入業者の増税分の価格転嫁を拒否することを禁じたり、「消費税還元セール」を禁止する措置などを盛り込んでいる。施行は、税制抜本改革法の施行の前日前の政令で定める日で、平成29年3月末までの時限立法として、今国会での成立を目指す。
  消費税率は平成26年4月に8%、平成27年10月に10%に引き上げられる予定だが、その際、仕入側の大手小売事業者が、納入側の中小事業者に対し、商品やサービスを税込み価格に据え置いて上乗せ負担分の転嫁を拒むことや、消費税の転嫁に応じることと引き換えに、値札貼り替え作業などサービスの見返りを求めること、商品等の価格交渉において消費税を含まない価格を用いる旨の申し出を拒むことを禁止し、消費税の適正転嫁を図る。
● 「消費税還元セール」などの表示の禁止
  また、小売事業者が平成26年4月以降に商品の販売やサービスを提供する際、(1)購入者に消費税を転嫁していない旨の表示、(2)購入者が負担すべき消費税相当額の全部または一部を価格から差し引く旨の表示、そのほか、(3)「消費税還元セール」など、消費税に関連して購入者に経済上の利益を提供する旨の表示として内閣府令で定めるもの、といった表示を禁止する。これらの表示は、消費税率引上げの趣旨に反するとの考えだ。
  一方で、小売事業者の事務負担を軽減するため、価格の表示に関する特別措置を設けて、税額を含めた価格表示を義務付ける「総額表示義務」を時限措置として緩和し、「100円+税」などといった表示価格が税込価格と誤認されない表示であるときに限り、その表示を認める。また、消費税の適正な転嫁のため必要があるときは、税込価格に併せて、消費税を含まない価格または消費税の額を表示することも認める。
● 罰則規定やガイドラインも作成する方針
  事業者や事業者団体に対しては、参加企業の3分の2以上が中小企業であることを条件に、独占禁止法で禁止されているカルテルを一部容認する。増税分を申し合わせて一律に価格に上乗せする「転嫁カルテル」や、価格の表示方法を業界で統一的に定める「表示カルテル」を認める。
  そのほか、大手小売事業者が取引先の中小事業者からの価格転嫁を拒否していないかを監視するとともに、悪質な企業の社名公表、国に対して事業者が行う消費税の円滑かつ適正な転嫁に向けて国民への徹底した広報を行うことも明記されている。
  今後は、違反行為に対する具体的な罰則規定を設けることや、何が法律違反となるのかを具体的に示すガイドラインを作成する方針だ。
参照 公正取引委員会「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の
         是正等に関する特別措置法案」の閣議決定について
http://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h25/mar/130322.html
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2013.04.01
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