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ここだけは押さえておきたい、産前産後休暇と出産手当金
● 産前産後休暇制度は、現場の上司も押さえておきたい
  労働市場での女性の活躍を願う政府は、最近では育児休業を3年にすることも検討しており、今後その動向が注目されることになる。各企業の経営陣や人事担当者だけでなく、現場レベルでも出産後の勤務に関して、育児休業制度と同様に産前産後休暇についてもその仕組みをきちんと押さえておかなければならない。今回は、この産前産後休暇について出産手当金の基本的事項とあわせてまとめておく。
● 産前休暇は、本人の申し出がなければ与える必要なし
  まず産前産後休暇とは、 労働基準法に定められている“出産のための休暇”のことである。産前産後休暇の期間は、出産日を基準に、産前6週間(多胎妊娠の場合は14週間)、産後8週間となっている。産前休暇は、従業員からの休暇の申し出があった場合に与えることになっているので、従業員からの申し出がない場合には、産前休暇を与える必要はないし、また本人が働くことを希望しているのに「もう休暇を取りなさい」と強制することもできない。極端な話、本人が産前休暇を申請しなければ、出産日前日まで勤務することも可能である。
  一方、産後休暇は、従業員の意思に関わらず、必ず与えなければならない強制休暇となっている。仮に出産後3週間ぐらいで従業員から「体調も問題ないのですぐに働きたい」といわれても、仕事をさせてはいけないこととなっている。ただし、産後6週間が経過した場合には、医師が支障ないと認めた業務に限り、労働者の同意を得た上で、労働させることが認められているので、ここは押さえておきたい。
● 出産手当金は、標準報酬日額の3分の2が支給される
  産前産後休暇中は、賃金が支給される企業もあるが、一般的に中小企業では“ノーワーク・ノーペイ”の原則で賃金は支給されない。そのような時に助かるのが出産手当金という制度である。出産手当金とは、健康保険の被保険者が出産のために仕事を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として保険者(健康保険組合や協会けんぽ)から支給される手当のことである。出産が予定日より遅れた場合、その遅れた期間についても出産手当金が支給されるので被保険者にとってはありがたい制度である。
  出産手当金は、1日につき被保険者の標準報酬日額の3分の2に相当する額(1円未満四捨五入)が支給される。例えば、標準報酬月額が24万円で、標準報酬日額が8,000円の場合、1日あたり5,333円が支給されるので、産前産後休暇期間が合計98日間とすると、総支給額は52万2,634円となる。
  最後に、この出産手当金の請求については、被保険者本人が病院等に出産した事実のサインをもらってくるだけでなく、企業側が申請書に賃金の支払い状況や出勤状況に関しても証明しなければならないので、賃金台帳と出勤簿は必ず作成しておいていただきたい。
参照 :全国健康保険協会 出産のため会社を休んだとき
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/cat315/sb3090/r148
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.05.13
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