>  今週のトピックス >  No.2622
国民会議「議論の整理(案)」に見る医療・介護分野の注目点
● 軽度者の受け皿となる「地域包括ケア計画」
  8月21日という設置期限を視野に入れつつ、社会保障制度改革国民会議の議論が加速している。4月22日に開催された第10回会合では、医療・介護分野に関して、それまでの議論の整理(案)(以下、整理案)が提示された。この整理案を受け、直後の4月25日に社会保障審議会の介護保険部会も再スタートを切っている。
  介護分野で注目したいのは、平成27年度に改正が予定される介護保険制度の「給付範囲」がどうなるかという点だ。ここまでの議論を見ると、特に経済団体などが主張している「特養ホーム等の施設の重度者特化」「軽度者の(介護保険から外すことも視野に入れた)給付範囲の見直し」が勢いを増している。
  このあたりについて、今回の議論の整理案を見ると、注目すべきポイントが浮かび上がってくる。まず、軽度の高齢者について、「見守り・配食等の生活支援が中心であり、要支援者(要支援1・2の認定を受けた者)の介護給付範囲を適正化すべき。具体的には、保険給付から地域包括ケア計画と一体となった事業に移行し、ボランティア、NPOなどを活用し柔軟・効率的に実施すべき」とある。
  ここに記されている、「保険給付」からの移行先とされる「地域包括ケア計画と一体となった事業」とは何か。「地域包括ケア計画」については、整理案の「医療・介護の提供体制のあり方」の部分にこう記されている。
「地域包括ケア計画は、市町村が主体となって、(中略)介護だけでなく、在宅医療、住まい、生活支援、予防を位置づけるべき。特に『住まい』の確保は、(中略)軽度要介護者の受け皿としても重要」
● 財源は消費増税による基金(補助金)か
  この場合の「住まい」は、サービス付き高齢者向け住宅などが想定されていると思われるが、いずれにしても総合的な生活支援策が、市町村の策定する計画に基づいて実施されることになる。これを介護保険給付の外で行なうとなれば、当然、「財源をどこに求めるのか」という点が課題となってくる。
  これに対する一つの解答として示されているのが、「(地域包括ケア計画など)に沿った医療機能の分化・連携を促すための基金を創設(財源として消費税増収を活用)し、診療報酬や介護報酬による利益誘導ではなく、まずは補助金的手法で誘導すべき」という部分である。ここでは「医療機能の分化・連携」となっているが、地域包括ケア計画がベースとなる事業という点で、軽度者の受け皿整備も含まれることになるだろう。
  つまり、軽度者の受け皿は、消費増税分を活用した基金および補助金によって整備されるという流れを読むことができる。これが仮に実現されるなら、社会保険から基金・補助金行政への大きな転換を示すことになる。そこで何が起こるのかといえば、利用できるサービスの範囲が基金という枠組みの中で大きく再編成される可能性があるということだ。
  例えば、現在軽度の高齢者に対してサービスを提供している事業者は、新たな枠組みでの事業継続は可能になるのかどうか。利用者側から見た場合、サービスの選択権は十分に保障されるのかどうか。様々な視点から、今後の議論を注視していく必要がある。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.05.16
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