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「若者チャレンジ奨励金」の創設で非正規雇用の若者を支援
● 若者の人材育成に取り組む事業主に朗報
  厚生労働省では、今年3月18日に「若者チャレンジ奨励金」を創設しました。
  同奨励金は、35歳未満の非正規雇用の若者を自社の正社員として雇用することを前提に自社内で実習(OJT)と座学(OFF−JT)を組み合わせた訓練を実施する事業主、さらにはその訓練受講者を正規雇用した事業主に対して助成金を支給する制度です。前者は「訓練奨励金」、後者は「正社員雇用奨励金」となっています。
  非正規労働者については、正社員と比較して解雇や期間満了による雇止めなどにより雇用調整の対象とされやすく賃金も低くなっています。また、企業の中で職業訓練などを受けて職業能力を高める機会に乏しい等の問題もあります。そこで同省では、非正規雇用者を期間限定で雇用して訓練を実施し、訓練終了後に正社員として雇用する事業主を支援するために上記奨励金を創設しました。
  ちなみに、非正規雇用者は全国に1,870万人と非常に高い水準になっています(総務省「労働力調査(詳細集計)平成25年1〜3月期平均(速報)」より)。
● 1年度の訓練の上限は60人月
  訓練奨励金の概要は以下の通りです。
  対象者の要件は、以下のいずれにも該当する者です。
  ・  35歳未満の非正規労働者(期間の定めのある労働契約締結労働者、正社員と同じ待遇を受けていない労働者等)
  ・  過去5年以内に訓練を実施する分野で正社員としておおむね3年以上継続して雇用されたことがない者
  ・  登録キャリアコンサルタントにより訓練することが適当と判断され、ジョブ・カードの交付を受けた者(ジョブ・カードは、履歴シート、職務経歴シート、キャリアシート、評価シートの4つからなるファイルのこと)
  ・ 
訓練を実施する事業主と期間限定の労働契約を結んでいる者
など
  また、訓練の要件には以下のものがあります。
  ・  期間は3ヵ月以上2年以下、1ヵ月当たりに換算した時間数が130時間以上あること
  ・  1年度に計画できる訓練の上限は60人月であること(「人月」とは、受講者数×訓練月数の合計)
  ・  内容は、自社内での実習(OJT)と座学(OFF−JT)を組み合わせたもので、
OJTが占める割合が訓練時間全体の1割以上9割以下であること
など
  なお、支給される奨励金は、訓練実施期間に訓練受講者1人につき1ヶ月当たり15万円になります。
● 訓練終了後に正社員に採用するとさらに奨励金が
  正社員雇用奨励金は、訓練終了日の翌日から1ヶ月以内に訓練修了者を正社員として雇用し、その日から起算して1年または2年の間引き続き正社員として雇用した場合、事業主に対して支給される制度です。支給額は、正社員雇用から1年経過時に50万円、さらに2年経過時に50万円が支給されます。
  訓練奨励金は訓練実施計画を適正に作成し、その後計画に基づき訓練を実施します。その記録として訓練実施期間中に毎日、その日に受講した訓練内容を報告する日誌(訓練日誌)を作成する必要もあります。
  なお、当該奨励金は「予算がなくなり次第終了」と言われています。よって早期に訓練実施計画を作成し、都道府県労働局(またはハローワーク)へ提出して確認を受け、訓練受講者を選考、速やかに訓練を開始することが肝心といえます。
  受給できる金額は訓練を実施する期間、人数等により各事業所で異なりますが、仮に1事業所で1年間に訓練できる受講者数で最大の支給を受けた場合を試算してみると、2,900万円にもなります。その内訳は、訓練奨励金:(20人×3ヶ月×15万円)+正社員雇用奨励金(1年経過時):(50万円×20人)+同(2年経過時):(50万円×20人)となります。もちろんこの試算は、人数を最大にするため訓練期間を最短の3ヶ月とし、訓練受講者全員を正規雇用し、雇用後2年間誰1人退職者がいなかったと想定した場合の金額です。
  さらに注目すべき点は、非正規雇用者の要件を満たしていれば、新規雇用、既存労働者のどちらにでも同制度を活用できることです。要件や手続きが一見複雑に見えますが、手順通りに手続き及び訓練を実施していけば受給できます。現代社会の問題点の一つである非正規雇用者の雇用環境改善に貢献できる助成金制度ですので、読者のお客さまの中で若者の雇用を前向きに検討されている中小企業があったら、ぜひともお知らせしてほしいものです。
参照 : 厚生労働省:若者チャレンジ奨励金(若年者人材育成・定着支援奨励金)
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/shokugyounouryoku/career_formation/challenge/
  
田中 実(たなか・みのる)
帝王経営コンサルタンツ 代表、
田中社会保険労務士事務所佐野新都心オフィス 代表
全国給与計算検定協会 理事長
経営コンサルタント  社会保険労務士
東京出身。老舗製造メーカー2社で総務・経理にて約15年間勤務。数多くの例外的事項を経験・解決し総務・経理部長代理職を経て社会保険労務士事務所を開業、翌年には帝王経営コンサルタンツを設立し代表に就任。実務にも精通している。
出版物としては、「社会保険労務士“スタートダッシュ”営業法」(同文館出版)(Amazon社労士部門1位)、「給与計算の実務」(同文館出版)等があり、雑誌関係では「週刊SPA!」「別冊SPA!」に取材掲載、「労務事情」(産労総合研究所)、「月刊飲食店経営」(商業界)、WEBサイト等に数多く執筆している。
数多くのクライアントを抱えながら、商工会議所、大手生命保険各社での講演・セミナー等があり、その実績は100件を超え具体的でわかりやすいと常に高い評価を得ている。
保険会社(代理店等)と提携し、助成金を活用した保険獲得術を得意分野としている。
WEBサイト: http://srminotanaka.web.fc2.com/『帝王 田中実』検索
  
  
2013.06.03
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