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労働基準監督署の定期監督等の実施結果、約7割が法違反
● 違反内容別では、労働時間、割増賃金が上位
  東京労働局及び労働基準監督署は、労働者が適法な労働条件の下で、安心かつ安全に働くことができる労働環境の実現を目指し、積極的に監督指導を行っているが、このたび、平成24 年に管下18 労働基準監督署が実施した定期監督等についてその状況を取りまとめた結果を発表した。
  調査結果によると、法違反があった企業の割合(違反率)は、72.2%と前年比で1.2ポイント増となった。違反内容別の順位をみると、1位が労働時間、次いで割増賃金、就業規則と続いているが、不適切な労働時間管理が行われた結果、割増賃金の未払いが生ずるケースが多くなっている。
● 違反率の高い業種は接客娯楽業と製造業
  労働基準監督署の調査に関しては、前回のトピックスでその対象となりやすい業種について記載しているが、今回は労働基準監督署の調査の数値をみていきたい。
平成24年 定期監督等の実施件数・違反率(抜粋)
  定期監督等 (件) 違反率 (%)
製造業 1,086 79.6
建設業 3,266 64.3
運輸交通業 399 77.9
商業 1,720 77.2
接客娯楽業 526 82.1
  今回の調査結果によると、業種別にみた違反率の高い業種は、接客娯楽業が82.1%とトップで、次いで製造業(79.6%)、運輸交通業(77.9%)と続いている。接客娯楽業においては、特に小規模事業場が多く、労働基準関係法令の不知に起因する違反が多く認められており、労働基準監督署もその対応にはかなり力を入れている。
  定期監督等の指導件数だけを業種別でみると、建設業 が3,266 件と圧倒的に多く、商業 1,720 件、製造業 1,086 件と続いている。建設業においては、建築工事現場の墜落・転落防止を重点に一斉監督を実施しているが、これらの効果は労災事故の削減にも大きく貢献しているといえる。
● 労働基準法違反、労働安全衛生法違反の主な事例
  東京労働局では、労働基準法違反と労働安全衛生法違反事例を紹介しているが、そのうちの代表的なものをご紹介しておきたい。事業主はこうした法違反に該当することがないか、今一度見直してみる必要があるかもしれない。
【労働基準法違反】
<就業規則の作成等>
常時使用する労働者が10人以上いるのに、就業規則の作成・届出がないもの
<労働時間>
時間外労働に関する協定(三六協定)の締結・届出がないのに、労働者に法定労働時間を超えて時間外労働を行わせているもの。また、協定の締結・届出はあるものの、その協定で定めた時間外労働の限度時間を超えて時間外労働を行わせているもの
<割増賃金>
時間外労働、深夜労働を行わせているのに、法定割増賃金(通常の賃金の2割5分以上)を支払っていないもの。なお、平成22年4月1日から、大企業(業種により資本金又は出資金の規模若しくは労働者数に応じて定められている)については、1か月60時間を超える残業時間に対して50%以上の割増率で割増賃金を支払わなければならないこととなっている。
【労働安全衛生法違反】
<安全衛生管理体制>
常時使用する労働者が50 人以上いるのに、衛生管理者を選任していないもの。
<健康診断>
常時使用する労働者に対して、1年以内ごとに1回、定期健康診断を実施していないもの。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.06.10
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