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「都市部の高齢化」を課題とした検討会開催
● 都市部の整備と同時に地方への移住も視野に
  5月20日、厚労省において「都市部の高齢化対策に関する検討会」の第1回会合が開かれた。いわゆる団塊世代が全員65歳以上を迎える2015年、あるいは75歳以上を迎える2025年に向けて、さらなる急速な高齢化が進むことは、社会保障制度全般を語るうえで必ず取り上げられる前提である。さらに、将来的な高齢者の増加率に目を移した場合、際立っているのが、埼玉県(2位)、千葉県(3位)、神奈川県(4位)といった、いわゆる首都圏のベッドタウンにあたる地域だ。
  これらの地域は、高度成長期にニュータウンなどが数多く建設され、地方から上京してきた人々が都内に職を持ちつつ通勤圏として生活の場を築いてきた。その人々が一斉に高齢期を迎えようとする現在、医療・介護の社会資源とのバランスが崩れやすい環境にある。この課題に焦点を絞り、いかに施策を講じるかをテーマとしたのが今回の検討会である。
  第1回会合では、議案が提示されている。そこには、都市部の社会資源をいかに整備していくかという点もさることながら、それが追い付かない状況下での「もう1つの選択肢」のあり方が示されている。それは、「地方での都市部高齢者(要介護者を含む)の受け入れ時の課題と対応策の検討」というものだ。つまり、都市部から地方への移住を一つの選択肢とし、どのようにすれば、スムーズな移住および地方側の受け入れができるか──これを主要な検討課題に掲げている。
● 自治体ごとの財政や雇用など、検討事項はまだ多い
  地方の場合、都市部に比べて地価が低く、人口減が進む中で敷地や建造物などの「空き」をどうするかが課題となっている。これを活用することで、施設など「都市部からの高齢移住者」の受け皿にあてるというビジョンは立てやすい。ただし、人口減が進んでいるということは、高齢者を支える側の人材も不足していることを意味する。また、移住者のための公的な社会保障を考えた場合、受け入れ側の自治体財政が一気に悪化するというリスクについても考えなければならない。
  一方、移住する高齢当事者の視点で見た場合、住み慣れた地域を離れて新たな環境に身を置くことは、時として様々なデメリットにもつながる。地域との交流がうまく進まなければ、逆に孤立感を強めてしまう恐れもある。食習慣をはじめ、その地域の生活風土になじめなければ、健康状況など生活の質の低下を招くケースも生じかねない。また、年金だけでの生活が難しい高齢者の場合、元気なうちは「働きたい」という意向もあるが、その就業の受け皿も課題の一つとなってくる。
  これらの諸課題がしっかりと解決されないまま、「移住促進」の部分だけに力を入れてしまえば、高齢期の安心という意味では本末転倒になりかねない。もちろん、自治体連携によって課題解決のための具体的なモデルケースも挙がっている。ただし、それが国の施策として一般化できるものなのかどうかは、きちんと精査しなければならないだろう。現在は主に有識者のみの検討会となっているが、当事者側の参加も視野に入れつつ、国民的な議論を進めていくことが望まれる。
参照 : 第1回都市部の高齢化対策に関する検討会資料
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000032exf.html
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.06.13
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