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規制改革で先進医療が大幅に拡大!?
● 最先端医療迅速評価制度とは…
  6月14日、現政権の目玉施策の一つともいえる「規制改革実施計画」が閣議決定された。エネルギー・環境分野をはじめとして、保育分野、健康・医療分野など140以上の具体的な個別項目があがっている。
  ここで注目したいのは、健康・医療分野における「先進医療の大幅拡大」である。具体的には、「保険診療と保険外の先進医療を幅広く併用して受けられるようにする」という、いわゆる混合診療の適用範囲の拡大が示唆されている。そのために、「新たに外部機関等による専門評価体制を創設し、評価の迅速化・効率化を図る」としている。この体制は「最先端医療迅速評価制度(仮称)(先進医療ハイウェイ構想)」と名付けられている。
  実際の改革スケジュールとしては、本年度秋をめどとし、まずは抗がん剤から開始するというものだ。これまで混合診療が適用されなかった抗がん剤について、その適用に際しての規制緩和が進むことが予想される。
  では、最先端医療迅速評価制度(仮称)とは、具体的にどのような仕組みになるのか。6月15日の中央社会保険医療協議会(中医協)で示された創設案を見てみよう。現行の先進医療については、医療機関から医療技術の申請を受け、そこから先進医療会議によって@個別技術の適否、A実地医療機関の適否、B実地計画の適否が検討されたうえで保険併用がスタートする。この間、おおむね6〜7ヶ月が費やされる。
  これに対し、迅速評価制度の場合は、医療機関の申請前に、あらかじめ先進医療会議によって対象技術や実施医療機関群を設定しておく。つまり、医療機関の申請に対して検討が行なわれるのは、Bの実地計画の適否のみとなる。このBの検討を行なうべく、新たに外部評価機関等を設置、これによって申請から保険併用のスタートまでの期間が、おおむね3ヶ月程度に短縮されるというわけだ。
● 今後の規制改革の行方
  ちなみに、混合診療については、日本医師会などを中心に根強い反対論がある。懸念されているのは、「医療保険財政の悪化を回避したい国としては、混合診療をスタンダード化することにより、先進的な医療技術を保険診療に組み入れることを回避しようという流れになりやすい」という点だ。そのうえで、医師会は、日本で未承認の抗がん剤などについて「安全で有効なことが客観的に証明されるならば、速やかな保険適用を進めるべき」という主張を展開している。
  従って、今回予定される規制緩和については、公的医療保険制度、ひいては社会保障制度全体の枠組みの中で、どのように位置づけられていくのかという点にある。当然、医師会などからは、「保険併用に向けた審査のスピードアップを図るのであれば、保険適用の審査も同様に迅速化するべき」というタイアップ論などが出てくる可能性もある。
  診療報酬等を議論する中医協などでは、今回の規制改革がどのように受け止められるのか。やはり官邸主導色の強い社会保障制度改革国民会議の議論では、保険給付範囲の適正化などを強く進める動きも見られる。TPPにかかる議論も、混合診療の流れを左右するポイントになると思われる。より幅広い視野で規制改革の流れを注視していくことが必要だ。
※  混合診療…現行の公的医療保険制度では、保険適用の範囲外となる診療を提供した場合、原則として保険診療の部分もすべて適用外となる。ただし、先進医療会議で認められた先進医療については、例外的に保険併用が可能となっている。これを混合診療という。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.06.20
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