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非正規社員割合の高止まりは年金保険料納付にも影響?
  厚生労働省「平成24年度の国民年金保険料の納付状況と今後の取組等について」によると、2012年度の国民年金納付率は59.0%で、2011年度の58.6%から0.4%上がり若干改善したものの、日本年金機構が目標としている納付率60%には届きませんでした。
● 雇用形態が納付率に影響も
  納付率を年齢階級別に見ると、25〜29歳が46.8%で最も低く、保険料を納付しない理由としては「保険料が高く、経済的に支払うのが困難」が74.1%と高くなっています。
  総務省「労働力調査」(詳細集計・平成24年平均)によれば、2012年の正規の職員・従業員は3,340万人と、前年に比べて12万人の減少となった一方で、パート・アルバイト、派遣社員、契約社員などの非正規の職員・従業員は1,813万人と2万人の増加となりました。
  雇用者に占める非正規社員の割合は35.2%で全体の3分の1を超えており、これは過去最高の水準。年齢階級別に見ると、15〜24歳(在学中を除く)では31.2%、25〜34歳では26.5%と、若年層の非正規社員の割合は3、4人に1人程度と少なくありません。就業状況は国民年金保険料未納の要因の一つとも考えられ、収入が少なく国民年金保険料を納付できない実情が浮かんでくるようです。
● 納付率向上に必要な労働環境の改善
  上記のデータにもあるように、経済的な事情から国民年金保険料を払いたくても払えない方は、まだまだ多いように感じます。筆者の元へFP相談で来られる方の中にも、過去の年金保険料支払い状況を見ると、20歳代〜30歳代に未納期間のある方が時々見受けられ、キャッシュフロー表を作成すると、年金受給額の少なさから定年後の収支が厳しくなるケースが多く、老後資金のベースとも言える公的年金受給額への影響が心配されます。
  年金受給資格期間の10年への短縮、国民年金保険料の後納制度や2年前納による割引率の拡大など、年金保険料の納付率を上げて、年金受給者を増やすためのさまざまな施策がありますが、根本的に労働環境の改善が実現しない限り、目標とする60%の納付率を達成することは難しいのかもしれません。
  いま、アベノミクスの成長戦略の一環として「限定正社員」を増やす方向に動いています。働く場所や時間は限られるものの、非正規社員が限定正社員になることができれば、将来の年金受給の改善にもつながるでしょう。公的年金制度を持続するためにも、若い世代の労働環境や就業状況には注目していく必要がありそうです。
  
高橋浩史 (たかはし・ひろし)
FPライフレックス 代表(住まいと保険と資産管理 千葉支部)
日本ファイナンシャルプランナーズ協会CFP®
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
東京都出身。デザイン会社、百貨店、広告代理店などでグラフィックデザイナーとして20年間活動。その後、出版社で編集者として在職中にファイナンシャル・プランナー資格を取得。2011年独立系FP事務所FPライフレックス開業。
住宅や保険など一生涯で高額な買い物時に、お金で失敗しないための資金計画や保障選びのコンサルタントとして活動中。その他、金融機関や出版社でのセミナー講師、書籍や雑誌での執筆業務も行う。
ホームページ http://www.fpliflex.com
ブログ http://ameblo.jp/kuntafp/
  
  
2013.07.04
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