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健康保険の海外療養費の概要
● 申請することで受けることができる海外療養費
  会社に勤務する人は一般的には健康保険に加入しており、日本国内で通常の治療を受ける際には、保険証を提示することで原則、医療費の3割(自己負担額)を支払えば治療を受けることができる。しかしながら、海外で急に体調を崩して治療を受けた際には、保険証の適用がないので治療費を一旦全額支払うことになる。そのような場合、保険者に申請することにより審査が通れば医療費の一部を払い戻すことができる。これを「海外療養費」と呼んでいるが、そのポイントは当然といえば当然であるが、あくまで自ら申請しなければ給付を受けることができないということである。そこで今回は、不正受給に関して一部メディアでも取り上げられ話題になっている海外療養費について、基本的な事項を含めてその概要をまとめておきたいと思う。
● 治療目的で海外に出向いた場合、海外療養費の対象にはならない
  健康保険制度の海外療養費制度は、昭和56年に創設された。これまでもたくさんの人が利用し、会社員の人たちはそのメリットを享受してきた。一方で自営業者等が加入している国民健康保険では、平成13年の改正でやっと海外療養費制度が設けられた。海外へ一時赴任する人や海外旅行者も増えていく中で、海外療養費制度は大変意義のある素晴らしい制度であるといえるだろう。
  さてこの海外療養費は、健康保険で認められていない費用は当然対象にならない。医師による治療内容の証明や医療機関の領収書があるからといって、必ずしも対象とはならないので事前にきちんと確認しておこう。また、治療を目的に海外に出向いた場合も対象外となるので注意が必要である。
● 時効は海外で医療費の支払いをしてから2年
  海外療養費については、日本国内の医療機関で同じ病気やケガを治療した場合にかかる医療費を基準に計算した額から、自己負担相当額を差し引いた額が支給される。また海外療養費は、治療等の費用を外貨で支払った場合は、支給決定される日のレートで円換算し、円で支給される決まりとなっている。
  給付を受ける権利には時効があり、海外で医療費の支払いをした日の翌日から数えて2年を経過するまでとなっているので、治療を受けた場合には、忘れないうちに早めに申請すべきといえる。実際に申請する際には、健康保険制度の保険者(協会けんぽ、健康保険組合等)が用意している療養費支給申請書に、医師の証明のある診療内容明細書及び領収明細書等を添付しなければならない。明細書等は、日本語に翻訳した資料が求められていると同時に翻訳者の住所や氏名も記載することになっているので、記載方法や添付書類に関しては、窓口で事前に細かなところまで相談しておくことがスムーズに手続きを進めるコツである。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.07.08
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