>  今週のトピックス >  No.2654
介護ロボットの開発・導入が急加速
● 介護ロボット導入の後押しをしているのは…
  現在、経済産業省の主導により「ロボット介護機器開発・導入促進事業」が進められている。平成25年度予算額は23.9億円におよび、大学・企業等で構成するコンソーシアム(産学連携による事業体)への委託事業のほか、民間企業等に対しても補助事業の対象を募っている。ちなみに、一次採択事業の中身を見ると、「センサー等による認知症の人の見守り支援」のほか、当事者の自律的な運動機能や介助者による支援作業をアシストする「パワードスーツ」型機器類が目立っている。
  介護ロボットについては、「介護は人の手によるぬくもりのあるサービスが重要」という考え方が一般にはまだまだ根強く、どちらかというと否定的なイメージが先行している感がある。その一方、実際の介護現場では、否定的なイメージは少しずつ影をひそめ、積極的な導入の機運が高まる様子が見られる。
  例えば、厚労省が介護施設に対して行なった調査によれば、介護ロボットの導入について「適切なものがあれば導入を検討したい」という回答が、施設管理者で31.6%、現場の介護スタッフで46.2%に達している。興味深いのは、管理者よりも現場スタッフの方が高い関心を示していることだ。これは、介護労働に対する過酷さが、ロボット導入の機運を後押ししている状況を表している。
● 介護ロボット導入についての今後の課題
  厚労省が行なった調査によれば、介護施設で働く職員のうち約7割が、首、肩、腰に何らかの痛みを有しており、特に腰部については、「痛みがある」とした人の9割以上が該当箇所としてあげている。介護労働における腰痛は、いまや重大な職業病リスクとして認識されており、介護業界全体の離職率を引き上げている一因であることも明らかだ。
  加えて、かねてから問題となっているのが、いわゆる団塊世代が全員75歳以上を迎える2025年の「介護労働力の状況」である。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、2007年を基点とした労働力人口は5〜13%減ることが想定されている。一方で、必要とされる介護職員数は80〜117%増という途方もない数字となっており、このミスマッチをどうするかというのは深刻な課題といえる。
  そのミスマッチを解消するカギとして期待されるのが、介護ロボットであり、今後も重要な国家プロジェクトとして推進されることは間違いないだろう。問題は、機能が高度化していく中でどのように安全性を確保するかにある。特に、当事者や介助者が実際に装着するタイプのものが増えるとなれば、ひとつ間違えれば大きな事故事例に結びつきかねない。
  こうした点をふまえ、国は年内にも介護ロボットについての安全基準を策定するとしている。ただし、ひと口に安全基準の策定とは言っても、現場レベルにおける実証事例を丹念に積み重ねていくことが必要であり、そのための評価手法の確立が必要になる。実際、介護現場に対する意識調査でも、「現場には介護ロボットに関する認知がなく、評価できる状況ではない」とする回答が5割以上にのぼっている。このレベルからスタートして、今年後半までにどれくらいの実証を重ねることができるのか。国の本気度が問われている。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.07.11
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