>  今週のトピックス >  No.2656
法人企業の動向を知る指標としての「会社標本調査」
  毎年、国税庁では確定申告書等の情報から、法人企業の現状や実態について「会社標本調査」としてその分析結果を公表している。現在判明している最新のものは、平成23年度分(平成23年4月1日〜平成24年3月31日の間に終了した事業年度を対象)について取りまとめられたものであり、すでに3月に公表されている。
● 資本金1億円以下の法人が全体の99%、欠損法人の割合は72.3%
  まず、資本金別の法人数の分布であるが、従来、資本金の階級区分は「以上、未満」にて行われていたものを、今回の調査からは「超、以下」に変更された。これにより、税法上に見られる法人規模の区分、たとえば、法人税の税率適用等において、「大企業=資本金1億円超、中小企業=資本金1億円以下」となっているものとの整合性がとれることとなった。分析の結果は、平成23年度分の法人数257万8,593社のうち、いわゆる中小企業と位置づけられる資本金1億円以下の企業が占める割合は実に99.0%、我が国の企業のほとんどが中小企業に相当することがこのデータからも明らかである。さらに、資本金1,000万円以下の法人については約218万社で、全体の84.7%を占めている。
  次に、欠損法人の割合については72.3%。これは、昨年分、一昨年分の72.8%に比べると占率はわずかに減少しているが、直近10年間(平成13年度分以降)の実績では平成19年度分までは欠損法人の割合は70%を切る水準であり、法人全体の業績の回復についてはまだまだ改善が進んでいないことが伺われる。
● 欠損企業の繰越欠損金は対前年比減少、利益計上法人の申告所得金額は対前年比増加
  このような欠損企業については、当年度に発生した赤字を翌年度以降の所得金額から定められた範囲内で控除できるという繰越欠損金の制度(最長で9年間)があるが、平成23年度分の繰越欠損金の当期控除額は9兆7,069億円(対前年比▲9.4%)、翌期繰越額は76兆436億円(対前年▲4.1%)とともに前年よりも減少している。一方、利益計上法人に目を転じてみると、申告所得金額は33兆9,403億円と対前年で4.6%増となり、所得金額に関しては2年連続しての増加となった。平成20年度において対前年比▲36.2%、翌21年度においても▲14.0%と2年連続しての大きな落ち込みがあって以降、この部分については少しずつではあるが、改善の兆しが現れていると見ることができるかもしれない。
● 法人税額は対前年比2.9%増。今後の動向に注目
  最終的な法人税額(納付すべき税額)は、8兆6,586億円で、対前年2.9%の増加となっている。ここ最近では平成21年度分が7兆7,943億円と最低で、そこから2年連続で増加しているが、直近10年間で最高であった平成18年度分14兆758億円に比較すると、未だ6割程度の水準にとどまっている。
  平成24年4月1日から開始する事業年度においては法人税率が引き下げられ、さらに、平成25年度税制改正では、設備投資や雇用促進を目的とした税額控除の創設や拡充も実施されており、今後、法人税による税収がどのように推移するのか、今後の景気回復や財政再建を占う上で大いに注目すべき指標となると考えられる。

参考:国税庁ホームページ 平成23年度分「会社標本調査」 調査結果について
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2012/kaisha_hyohon/index.htm
2013.07.16
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