>  今週のトピックス >  No.2662
熱中症対策に向け、省庁連絡会議など活発化
● 国家的課題として意識される熱中症対策
  7月に入り、梅雨明けが宣言されるやいなや連日強烈な猛暑が列島を襲っている。
  総務省消防庁のまとめによると、7月1日から7日までの1週間で、熱中症によって救急搬送された人は2,594名におよび、昨年同時期の888名を大きく上回っている。
  熱中症というと高齢者や児童など体力面での弱者への被害に注目が集まるが、同様に深刻なのが、建設・製造業界をはじめとする「職場における熱中症」である。未曾有の猛暑と指摘された2010年には、職場における熱中症による死亡災害件数は47件という数字を記録した。
  今年も7月初旬から猛暑が続いており、国としても省庁枠を超えて、熱中症予防にかかる様々な普及・啓発活動に取り組んでいる。厚労省では、2012年6月に「熱中症対策に関する検討会」を設置したが、今年も医療・保健分野の有識者を集めて第2回の検討会を開催した。また、厚労省や環境省、消防庁などをはじめとした複数の省庁で構成される「熱中症関係省庁連絡会議」も2007年より随時開催されており、熱中症対策が国民生活や経済活動にかかわる国家的課題として位置づけていることが分かる。
● WBGT値とは?
  熱中症対策にかかる具体的な普及・啓発については、厚労省より一般国民向けにリーフレットが発行されている。そこには、「こまめな水分・塩分の補給」をはじめ、「扇風機やエアコンを使った温度調整」など、いまや国民的な常識とも言える方策が改めて強調されている。その中の一つに「こまめなWBGT値の把握」という、一般の人にはちょっと聞き慣れない専門用語が上がっている。
  WBGT値とは、気温、湿度、輻射(放射)熱から算出される「暑さ指数」のことで、運動や作業の強度に応じた基準値が定められている。厚労省の労働安全基準局が示している熱中症対策の指針では、建設業等の職場において、まずWBGT値を(黒球、湿球温度計などの測定器具を活用することで)作業中に測定することに努めるべきとしている。そのうえで、その値を基準値と比較し、超える恐れがある場合には、冷房などによりWBGT値の低減を図ったり、代謝率レベルの低い作業に変更したりするよう促している。
  例えば、熱に順化している従事者の場合、「軽い手作業」など低代謝率の業務では、基準値が30となっている。これに対し、「重い材料を運ぶ」など高代謝率の業務では、基準値が25〜26と一気に低下する。つまり、職場のWBGT値が30を記録した場合、高代謝率の業務をそのまま続けていると、熱中症リスクが急速に高まることになる。リスクを主観で判断するのではなく、客観的な基準値との誤差を意識することが重要になるわけだ。
  実際、47名の死亡災害が発生した職場を調査したところ、その96%の職場で「WBGT値の測定が行われていない」ことが明らかになっている。
  アベノミクスによる景気浮揚は、建設・製造業などへの波及効果も大きいとされる。一方で、こうした職場のWBGT基準値が比較的低いことを考えた場合、労働安全の観点からスピード感のある普及・啓発策を進めることが求められるだろう。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.07.25
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