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非正規雇用者の健康診断や労働時間延長も助成金に!?
● 有期契約労働者等を雇用する事業主に朗報
  厚生労働省では、非正規雇用の労働者(有期契約労働者・短時間労働者・派遣労働者など)に対して、正規雇用への転換、人材育成、処遇改善などのキャリアアップに取り組んだ事業主を支援する「キャリアアップ助成金」を平成25年度から実施しています。
  キャリアアップ助成金は6コース用意されており、有期契約労働者等に対して――@正規雇用等への転換等を助成する「正規雇用等転換コース」、A職業訓練を助成する「人材育成コース」、B賃金テーブルの改善を助成する「処遇改善コース」、C健康診断制度の導入を助成する「健康管理コース」のほかに、D労働者の短時間正社員への転換や新規雇入れを助成する「短時間正社員コース」、E短時間労働者の週所定労働時間を社会保険加入ができるよう延長することを助成する「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」があり、包括的に支援する制度になっています。
  有期契約労働者等がキャリアアップ等をすることによって労働者の士気・能力の向上が図られ、ひいては企業の生産性の向上や優秀な人材の確保・定着も期待できます。6つのコースの中で事業主が比較的導入しやすい2つの助成金について、以下に紹介します。制度の詳細については本稿末に表示している厚生労働省のホームページ等を参照してください。
● 「健康管理コース」と「短時間労働者の週所定労働時間延長コース」
  健康管理コースは、雇用している有期契約労働者等を対象に、「法定外の健康診断制度」を労働契約または就業規則に規定し、延べ4人以上に健康診断を実施した場合に、1事業所あたり40万円(大企業は30万円)が助成される制度です。診断のたびではなく支給は1回のみとなっています。気になるところは、事業主が負担する健康診断費用ですが、雇入時健康診断および定期健康診断については全額、人間ドック及び生活習慣予防検診については半額以上を負担しなければ支給対象となりません。
  当該助成金を活用する際は、対象となる労働者を選考してその対象者が延べ4人以上になることを確認しましょう。さらに健康診断等によるコストアップと助成金とのバランスを考える必要があります。
  一方、短時間労働者の週所定労働時間延長コースは、パートタイマーの労働時間延長を促進するもので、週所定労働時間25時間未満の有期労働契約者等を週所定労働時間30時間以上に延長した場合に助成されます。この延長のポイントは「週30時間以上」。パートタイマーが厚生年金の被保険者の対象になるか否かの判断は、同じ事業所で同様の業務に従事する一般社員の労働日数、労働時間等を基準に判断しますが、「1日又は1週の所定労働時間が一般社員の概ね4分の3以上」の場合は該当します。仮に週休2日で考えると、週30時間労働は1日あたり6時間となり、一般社員が8時間働いているのなら3/4要件を満たしていることになります。そのため、事業主は週所定労働時間を30時間以上に延長後、直ちに当該労働者を社会保険に適用(加入)させることが支給対象の要件に盛り込まれています。
  支給額は1人あたり10万円(大企業は7.5万円)で、1年度1事業所あたり10人までとなっています。ただし注意したいのは、この人数は同じキャリアアップ助成金である「短時間正社員コース」と合計した人数であるという点です。
  当該助成金は、対象となる労働者の設定および支給対象事業主の要件が細かく定められています。よって当該助成金を活用したい場合は、まず対象となる労働者を選考してさらに社会保険加入によるコストアップとのバランスを考える必要があります。
  業界(介護、建設業、工場系等)によっては景気回復の兆しにより他の条件のいい会社に人材が流失してしまい、人手不足で困っている会社も出てきています。また労働人口の減少により今後は全体的に人手不足も予想されております。そのような時代背景の中で有期契約労働者や短時間労働者などから優秀な人材を確保して定着させるためには、助成金を上手に活用して社会保険の加入や健康診断実施等の福利厚生の充実などが今まで以上に重要になってくると思われます。
  
田中 実(たなか・みのる)
帝王経営コンサルタンツ 代表、
田中社会保険労務士事務所佐野新都心オフィス 代表
全国給与計算検定協会 理事長
経営コンサルタント  社会保険労務士
東京出身。老舗製造メーカー2社で総務・経理にて約15年間勤務。数多くの例外的事項を経験・解決し総務・経理部長代理職を経て社会保険労務士事務所を開業、翌年には帝王経営コンサルタンツを設立し代表に就任。実務にも精通している。
出版物としては、「社会保険労務士“スタートダッシュ”営業法」(同文館出版)(Amazon社労士部門1位)、「給与計算の実務」(同文館出版)等があり、雑誌関係では「週刊SPA!」「別冊SPA!」に取材掲載、「労務事情」(産労総合研究所)、「月刊飲食店経営」(商業界)、WEBサイト等に数多く執筆している。
数多くのクライアントを抱えながら、商工会議所、大手生命保険各社での講演・セミナー等があり、その実績は100件を超え具体的でわかりやすいと常に高い評価を得ている。
保険会社(代理店等)と提携し、助成金を活用した保険獲得術を得意分野としている。
WEBサイト: http://srminotanaka.web.fc2.com/『帝王 田中実』検索
  
  
2013.07.29
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