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気軽さや便利さの裏に潜むリスクに備える「自転車保険」
● 自分のけがと賠償責任に備える「自転車保険」
  自転車は、道路交通法では自動車と同じ「車両」であり、車両として交通ルールを守らなければならない。ルールを守らず事故を起こすと自転車側も責任を問われるが、自賠責保険のような強制保険はなく、自転車事故に備えるには損保会社の「傷害保険」や「個人賠償責任保険」に任意で加入することになる。
  一口に自転車事故といっても、自転車搭乗中に衝突・転倒などで自分がけがをする場合と、他人にけがをさせたり、他人の物を壊して法律上の賠償責任が発生する場合がある。そのため、自分のけがに備える「傷害保険」と、賠償責任の支払いに備える「個人賠償責任保険」の2つが必要となる。損保会社の「自転車保険」の多くはこの2つがセットになっている。
● 自転車事故でも高額になる賠償金
  神戸地裁は7月4日、自転車と歩行者との衝突事故をめぐる損害賠償訴訟で約9,500万円という高額の賠償を命じた。平成20年9月、当時小学5年生だった少年の自転車にはねられ現在も意識不明の状態が続いている女性(67)の夫と、保険金を支払った損害保険会社が、少年の母親を相手取り、計約1億590万円の損害賠償を求めていた(少年の母親は判決を不服として、大阪高裁に控訴)。
  「自転車だから事故を起こしたとしても大事には至らない。」
――まずそんな考えは改めなければならないだろう。いつ起こるかわからないのが交通事故であり、自転車事故でも被害の大きさにより数千万円の賠償金を支払わなくてはならない場合もある。この賠償責任は、未成年といえども例外ではない。
<自転車での加害事故例>
賠償額(※) 事故の概要
6,779万円 男性が夕方、ペットボトルを片手に下り坂をスピード落とさず走行し交差点に進入、横断歩道を横断中の女性(38歳)と衝突。女性は脳挫傷等で3日後に死亡した。
(東京地方裁判所、平成15年9月30日判決)
5,438万円 男性が昼間、信号表示を無視して高速度で交差点に進入、青信号で横断歩道を横断中の女性(55歳)と衝突。女性は頭蓋内損傷等で11日後に死亡した。
(東京地方裁判所、平成19年4月11日判決)
5,000万円 女子高校生が夜間、携帯電話を操作しながら無灯火で走行中、前方を歩行中の看護師(57歳)の女性と衝突。看護師には重大な障害(手足がしびれて歩行が困難)が残った。
(横浜地方裁判所、平成17年11月25日判決)
4,043万円 男子高校生が朝、赤信号で交差点の横断歩道を走行中、旋盤工(62歳)の男性が運転するオートバイと衝突。旋盤工は頭蓋内損傷で13日後に死亡した。
(東京地方裁判所、平成17年9月14日判決)
3,138万円 男子高校生が朝、自転車で歩道から交差点に無理に進入し、女性の保険勧誘員(60歳)が運転する自転車と衝突。保険勧誘員は頭蓋骨骨折を負い9日後に死亡した。
(さいたま地方裁判所、平成14年2月15日判決)
※賠償額とは、判決文で加害者が支払いを命じられた金額(上記金額は概算額)。
出典:日本損害保険協会「知っていますか?自転車の事故」
http://www.sonpo.or.jp/archive/publish/traffic/pdf/0002/book_bicycle.pdf
● 損保契約の内容チェックを
  通勤や通学、趣味で自転車に乗る機会が多いのであれば、自転車保険への加入は必須と思われるが、「個人賠償責任保険」については自動車保険、火災保険、傷害保険などに付帯されていることも多いので、自分の加入している自動車保険等の契約内容のチェックをお勧めする。
  しかし「保険に入っていれば事故を起こしても安心」というわけではない。その気軽さや便利さの裏にリスクが潜んでいることを忘れずに、交通ルールとマナーを守って、安全運転を心がけることが大切である。
2013.07.29
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