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消費税8%アップに合わせ介護報酬改定?
● 医療機関・介護事業者の経営負担に…
  政府内では煮え切らない面もあるようだが、平成26年4月に消費税が現行の5%から8%へとアップすることが予定されている。様々な業界が対応に追われることになるが、医療・介護などへの報酬にも影響が及ぶ。
  周知の通り、社会保険でまかなわれている医療・介護については、利用者にかかる自己負担は非課税である。実際にサービスを提供する医療機関および介護事業者も、消費税納税の義務はない。しかしながら、消費税額控除もできないため、仕入れにかかる部分(医療や介護にかかる設備投資など)に消費税が上乗せされる分、医療機関、介護事業者の経営には負担が及ぶことになる。
  この点について、国は「報酬改定によって対応する」ことで、サービス提供者側の負担に配慮するという方法をとっている。当然、平成26年4月、平成27年10月に控える消費増税に対しても、報酬面での手当てをどうするかという点が議論になってくる。これについて、例えば介護報酬に関して、どのような議論が進んでいるのかをここで整理してみたい。
● 消費税率8%引き上げ時の対応案
  平成25年7月19日に行われた介護給付費分科会では、厚労省の事務方より、消費税率8%引き上げ時の対応案が示された。1つは「介護報酬の上乗せ」によって対応するという案。つまり、平成26年度において消費増税を勘案した報酬改定を行なうというものだ。
  もう1つの案は、上記の「報酬の上乗せ」に加え、高額投資に対しては「別建ての対応」を行なうというものだ。具体策としては、必要な財源をプールして基金をつくり、施設・事業所からの申請に基づいて審査を行なったうえで、補てん分を支給するという案が示されている。ただし、この「別建て案」については、仕組みが複雑化するという点や、無駄な投資を行なっている事業所等のために効率経営を行なっている事業所にも負担が生じることから「不公平感が出る」(中医協での意見より)というデメリットが指摘されている。
  こうした議論の流れを見たとき、「報酬の上乗せ」のみで対応する案が有力となりそうだ。ただし、ここで問題となるのは、提供されるサービスによって仕入れ等の所要額に差が生じる点だ。一律で上乗せを行なった場合、やはりここでも不公平感が生じることになる。そこで、介護事業経営概況調査などを通じ、サービスごとの所要額を算出したうえで、上乗せする項目・配分を決定することになる。
  利用者側として気になるのは、報酬が上乗せされれば自動的に自己負担増となることだ。介護保険の場合、利用者負担は原則1割なので微々たるものではあるが、「消費税アップ分は福祉の充実に使う」という理解もある中で、社会保険サービスの自己負担に影響するという点に釈然としない心理も浮上しうる。
  特に、次期介護保険制度改正では、要支援1・2という軽度者を介護給付から外し、市町村が手掛ける独自事業などを受け皿とする案が浮かんでいる。「福祉の充実」のはずが、給付カットに負担増という現実を示されたとき、制度への信頼性がどうなるのかが懸念材料となる。このあたりの仕組みについて、政府からも丁寧な説明が求められてくる。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.08.15
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