>  今週のトピックス >  No.2675
5年間で約2割の企業が解雇を実施
● 解雇の実態調査は、今後の解雇規制緩和を議論するうえで必要
  独立行政法人 労働政策研究・研修機構は、このたび労働契約をめぐる実態を明らかにするために、「従業員の採用と退職に関する実態調査」を行い、その調査結果を7月31日に公表した。
  対象となったのは、常用労働者50人以上を雇用している全国の民間企業20,000社で、そのうち回答があったのは5,964件。郵送による調査票をもとにして行われた。
  この調査結果から、ここ5年間で約2割の企業が従業員の普通解雇や整理解雇を実施していることが明らかになった。これらの結果が、今後、法律改正をめぐる議論の際にどのような影響をあたえるのか興味深いところである。
● 「1,000 人以上」では30.3%が普通解雇を実施
  ここ5 年間における、正規従業員の解雇(懲戒解雇を除く)の有無については、「解雇は実施していない」とする企業が77.9%で、「普通解雇を実施した」企業が16.0%、「整理解雇を実施した」企業が8.6%となっている。このことから、20.7%の企業が何らかの解雇(「普通解雇」「整理解雇」のいずれか)を実施したことがわかった。
  これを正規従業員規模別にみると、普通解雇は規模が大きいほど「実施した」割合が高くなっており、「1,000 人以上」では30.3%が普通解雇を実施している。
  日本は、一般的に解雇規制が厳しいといわれているが、この結果をみたうえで一部の有識者からは「解雇規制は緩やかである」という意見も出ており、今後に影響がありそうである。
● 退職勧奨を行ったことがある企業は16.4%
  ここ5 年間で、個別に正規従業員の退職勧奨を行ったことが「ある」とする企業割合は16.4%、「ない」が82.4%となっている。これを正社員規模別にみると、規模が大きいほど、退職勧奨を行った企業割合が高く、「1,000 人以上」では30.3%となっている。
  その際の手続きについては、「特に協議はしなかった」企業が62.8%ともっとも高く、「従業員の代表を選んでもらい協議した」が15.1%、「労働組合と協議した」が11.8%などとなっている。各企業が行っている退職勧奨の状況は、インターネット上にもその様子が詳細に書かれていることもあり、企業側としても慎重に対応することがのぞましい。いずれにしても行き過ぎた退職勧奨は、解雇とみなされることもあるので、現場の管理職は社員個人の人格を否定するような問題発言などには十分注意する必要があるといえる。
参考 独立行政法人 労働政策研究・研修機構「従業員の採用と退職に関する実態調査」
http://www.jil.go.jp/kokunai/reports/2013/report03.htm
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.08.19
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