>  今週のトピックス >  No.2682
高年齢就業者に「介護負担」がのしかかる
● 厳しい高年齢者の介護と仕事の両立
  今年7月に公表された「平成24年就業構造基本調査」(総務省統計局)には、介護と就業の関係にかかる調査結果が示されている。それによれば、15歳以上の者のうち家族の介護をしている者の総数は約557万4,000人で、年齢層別に見ると「60〜64歳」が約108万2,000人と最も多い。そのうち有業者となっているのは約54万7,000人、これは「40〜49歳」「50〜54歳」という働き 盛りのケースよりも多くなっている。つまり、高年齢に差し掛かった者において、「働きながら家族を介護する」というケースが目立っているわけだ。
  この「60〜64歳」の「介護をしている有業者」のうち、男女ともに8割以上が継続就労を希望している。厚生年金の受給開始年齢が引き上げられる中、今後も高年齢就業者の継続就労希望は強まっていくことが予想され、それとともに「介護」との両立が大きな社会問題となってくる可能性がある。
  ちなみに、平成25年度の高齢社会白書では、「同居している主な介護者の介護時間」についての調査が上がっている。それによれば、介護が必要な人の要介護度が1の場合、「ほとんど終日」が12.5%、「半日程度」が6.9%という具合に、極めて手間のかかるケースは2割弱にとどまっている。これに対し、対象者が要介護3となった場合、「ほとんど終日」は33.8%、「半日程度」は17.0%で、あわせると5割に達している。要介護度が2段階上がるだけで、これだけの差が生じるのは、注意しなければならない大きなポイントだろう。
● 高年齢になるとダブル介護になるケースも…
  ここで、介護者が「60〜64歳」という高年齢であるケースを考えてみよう。この年齢になると、ほぼ同年代の配偶者が介護の対象となるケースも増えるが、平均寿命が伸びる中では80代や90代の「親」が対象となるケースも多い。中には、「親」と「配偶者」のダブル介護という光景を見ることもある。いずれにしても、介護の手間は40代、50代よりもかかっていることが推定される。
  高年齢となれば、そもそも体力的に「介護と仕事」の両立自体がきつくなる。これに加えて「介護にかかる手間」が増す可能性が高くなれば、相乗的に厳しさも増してくる。加えて、高年齢の就業者となれば、転職も厳しくなるため、現業において就業時間等を調整せざるをえない。つまり、両立に向けてのやりくり全体が、他の年齢層の「介護者」よりも難しくなる環境におかれることになる。
  こうした中では、60歳以上の就業者に対する「介護者支援」のあり方を、他の年齢層とは別個に考えていくことが必要だろう。
  冒頭の調査に戻ると、「介護をしている雇用者」のうち、介護休業制度や短時間勤務、介護休暇などの制度を活用している人は、わずか15.7%にとどまっている。介護休業制度の場合、その間の給与は保障されないが、雇用保険における介護休業給付を受けることは可能だ。また、要介護者1人あたり取得日数は上限93日となってはいるが、介護保険などの公的サービスをきちんと整えるなど、使い方によって在宅介護もずいぶんと楽になる。
  こうした制度の使い方について、60歳以上を対象とした説明会を開くなど、行政と企業が連携しての方策を考えたい時代といえる。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.08.29
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