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どうなる!? 資産の貸付けに係る消費税経過措置
● 一定要件に該当する場合は旧税率を適用
  消費税増税に踏み切るべきかどうかを最終的に判断する時期がいよいよ近づいているが、実際に消費税増税が決まるかどうかはさておき、そろそろ経過措置の確認をする必要がある。経過措置の対象となる取引には、工事請負契約や役務提供契約、旅客運賃など色々あるが、ここでは、事務所や駐車場の賃貸借など資産の貸付けの税率に関する経過措置について、改めて確認しておきたい。
  資産の貸付けの税率に関する経過措置は、平成8年10月1日から指定日の前日(平成25年9月30日)までの間に締結した資産の貸付けに係る契約に基づき、施行日(平成26年4月1日)前から引き続きその契約に係る資産の貸付けを行っている場合において、その契約の内容が次の3つの要件のうち「(1)と(2)」、または「(1)と(3)」に該当するときには、消費税率が上がった後も契約期間中は旧税率(5%)での取引として取り扱うこととされている。
  ただし、指定日以後にその資産の貸付けの対価の額の変更が行われた場合には、その変更後における資産の貸付けについては、この経過措置は適用されない。
● 経過措置の適用は最終的には貸す側が判断
  その要件とは、
  (1)その契約に係る資産の貸付期間及びその期間中の対価の額が定められていること、
  (2)事業者が、事情の変更その他の理由によりその対価の額の変更を求めることができる旨の定めがないこと、
  (3)契約期間中に当事者の一方または双方が、いつでも解約の申し入れをすることができる旨の定めがなく、その契約期間中に支払われるその資産の貸付けの対価の額が、貸付資産の取得価額等の90%以上であるように契約で定められていること、
  の3つだ。
  通常の事務所や駐車場の賃貸借では(3)の要件には該当せず、また、平成19年度税制改正により所有権移転外ファイナンスリース取引が原則売買取引とされた今では、(3)に該当する取引はあまりないと思われる。ということは、(1)は当然契約で定められているから、(2)に該当するかどうかがポイントとなる。一般的な賃貸借契約では、(2)の事情による対価変更の規定があることが多いので、結果として経過措置の対象にならないことが多いと考えられる。
  また、実際に経過措置を適用するにはもう一つ要件があって、「通知義務」というものがあり、資産の貸付けでは、貸す側が経過措置の対象取引であることを、借りる側に対して書面で通知しなければならないこととされている。その通知が来ない限りは経過措置の適用はないことになる。
  つまりは、資産の貸付について消費税の経過措置を適用するかどうかについては、最終的には貸す側が判断することになる。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2013.09.02
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