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医療・介護制度はどのように変わるか?〜社会保障制度改革国民会議の最終報告書から〜
  社会保障制度改革国民会議は、8月初旬に、医療や介護、年金、子育てなどの社会保障制度改革の方向性と各制度の具体的な改革案を示した最終報告書をとりまとめた。政府は、この報告書をベースに決定した改革の方針やスケジュール案を今秋の臨時国会で審議し、法改正が必要な改革については、来年度以降、順次国会に提出する予定である。来春以降の消費増税が前提であるが、我々にとっては大きな負担を伴うことになるこの改革案の基本的な方向性と、医療・介護分野にかかわる部分の具体案について整理する。
改革の基本的な方向性
   @  社会保障制度の持続可能性に向けたさらなる財源確保と給付抑制(1970年代モデルから21世紀(2025年)モデルへ)
  現在の社会保障制度の枠組みが構築された高度成長期(1970年代)とくらべ、現在では少子高齢化やそれに伴う生産年齢人口の減少、経済の長期低迷や非正規雇用労働者の増加など、社会情勢は大きく変化しており、社会保障費も継続的に増大している。既存制度の安定財源確保のためには、税や社会保険料の引き上げが必要であり、その負担増については、現役世代が高齢者を支える現在の「年齢別の負担」から「負担能力別の負担」に転換すべきであるとしている。
   A  高齢者世代中心型から全世代対象型の社会保障への転換(世代間の公平)
  「給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心」という現在のシステムを見直し、現役世代をはじめ働く意欲のある層に対して雇用や子育てへの支援を積極的に行うことで、全世代型の社会保障に転換するとともに、「負担の先送り」の解消を目指すとしている。具体的には、所得のある高齢者については、これまでの「一律負担」から「負担能力に応じた負担」を求めることなどが挙げられる。
   B  病院完結型から地域完結型への転換、医療・介護サービスの提供体制改革の実現
  「必要なときに必要な医療にアクセスできる」という意味でのフリーアクセスを守るためには、緩やかなゲートキーパー機能を備えた「かかりつけ医」の普及とそれに対する国民の意識の変化が必要としている。また、利用者・患者のQOL向上に向けて、急性期医療の充実を図ることなどによって早期の家庭復帰・社会復帰を実現するとともに、受け皿となる地域の病床や在宅医療・介護など包括的なケアシステムの構築・ネットワーク化が不可欠としている。
医療保険制度・介護保険制度の主な改革案
  各制度の主な改革案のうち、法改正が必要なものについては来年度以降に順次国会に提出される。主なものは以下の通りである。
医療保険制度・介護保険制度の主な改革案(抜粋)
 <医療保険制度>
  ・国民健康保険料の低所得者に対する軽減措置の拡充
  ・国民健康保険料の賦課限度額、被用者保険の標準報酬月額上限の引き上げ
  ・後期高齢者支援金の負担を全面総報酬制へ(2015年度から)
  ・紹介状のない大病院の外来受診について、一定の定額自己負担の導入
  ・70〜74歳の医療費自己負担を1割(特例措置)から2割(本則)へ引き上げ
  ・高額療養費の所得区分の細分化により、負担能力に応じた負担となるよう限度額の見直し
 <介護保険制度>
  ・一定以上の所得のある利用者の自己負担額の引き上げ
  ・特別養護老人ホームは中重度者、デイサービスは重度化予防に効果がある給付へ重点化を図る
  ・低所得者の第1号保険料軽減措置の拡大
参考
社会保障制度改革国民会議「社会保障制度改革国民会議報告書」平成25年8月6日
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kokuminkaigi/pdf/houkokusyo.pdf
2013.09.09
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