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在宅医療が介護保険に組み込まれる!?
● 在宅医療連携拠点事業とは?
  社会保障制度改革国民会議の報告書を受けて、具体的な法制化(プログラム法)に向けた骨子が閣議決定された。
  介護保険分野では、要支援1・2の認定者を現行の予防給付から市町村事業へと移行させるか否かが大きなポイントとなっている。
  だが、ここで注目したいのは、在宅医療の一部を介護保険事業へと組み込もうという流れが見られる点だ。
  国民会議の報告書を見ると、「医療と介護の連携と地域包括ケアシステムというネットワークの構築」に、こう記されている。
  まず、「かかりつけ医機能を担う地域医師会等の協力を得つつ、在宅医療と介護の連携を推進することも重要」としたうえで、「在宅医療連携拠点事業について、地域包括支援事業として制度化」するというものだ。
  ここに記されている「在宅医療連携拠点事業」とは、平成23、24年度に予算化されたもので、拠点としては、在宅療養支援病院・診療所や訪問看護ステーションなどが想定されている。ここにケアマネジャー資格をもつ看護師やMSW(メディカル・ソーシャルワーカー)などを配置し、地域の医療・介護を横断的にサポートすることになる。
● 退院支援へのプロセスと課題
  患者側から見たサポートとしては、やはり「退院支援」が大きなポイントとなる。
  近年は病院の入院機能が急性期治療に特化される傾向が高まり、入院日数の短縮化が進んでいる。そうした中、患者の容態が十分に安定しないまま在宅復帰となるケースも増えてきた。
  当然、在宅における介護ニーズとともに、一定の療養ニーズにも対応する必要性が高まる。つまり、「医療と介護の連携」がまずありきという点から、全体をコーディネートしていく役割が重要になるわけだ。これまで、家族介護力の不足、権利擁護の必要性といった介護側の困難ケースについては、地域包括支援センター(以下、包括)がサポート機能を果たしてきた。ここに一定の療養ニーズが加わった場合、包括だけでは担いきれないケースも想定される。
  そこで、医療連携を主眼とした包括機能を有する機関として、この在宅医療連携拠点が重要な役割を担うことになる。
  着目したいのは、この在宅医療を推進する拠点について、医療保険ではなく介護保険法の中で恒久的な制度として位置付ける方向性が打ち出されたことだ。
  報告書にある「地域包括支援事業」とは、これまでの地域支援事業を再編成することを目指した仕組みであり、冒頭で述べた要支援者に対する事業もここに組み込まれることが想定されている。
  地域支援事業自体は市町村主体の事業ではあるものの、実際には公費のほか介護保険料も財源として使われている。在宅医療の一部が介護保険によって運営されるわけだ。
  これまでも介護保険では、居宅療養管理指導のように、医師が利用者宅を訪れて療養ニーズを担うサービスは存在した。
  しかし、退院支援という入口部分からかかわるという点で、病院→在宅という流れにおいて、より河の上流部分に介護保険がかかわってくることになる。
  このことは、逆に言えば、介護保険の機能が「療養保険」的な性格をますます帯びることを示す。社会保険全般において、大きなターニングポイントになると見ることもできる。
参考
厚生労働省「4.在宅医療連携拠点事業」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01-04.pdf
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.09.12
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