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社会保険の適用拡大が短時間労働者に与える影響
● 半数を超える事業所が、短時間労働者の雇用の在り方を見直す
  2016年10月以降は社会保険の適用を拡大させ、新たに週所定労働時間20時間以上、月額賃金8万8千円以上、勤務期間1年以上のすべての要件を満たす短時間労働者(ただし、学生及び従業員数500人以下の企業に使用される者は除く)も、厚生年金・健康保険の被保険者の対象になることが決まっている。
  この法律改正を受けて、独立行政法人 労働政策研究・研修機構では社会保険の適用拡大が短時間労働者の雇用管理に及ぼす影響や、社会保険が適用拡大された場合の短時間労働者の対応意向等を探るため、事業所とそこで雇用されている短時間労働者の双方を対象にアンケート調査を実施し、その調査結果を発表した。
  調査結果によると、半数を超える事業所が社会保険の適用が拡大されたら短時間労働者の雇用の在り方を見直すと回答しており、事業所及び短時間労働者に多大な影響を与えることは確かである。
● 適用拡大要件に該当しないように、所定労働時間を短縮する
  社会保険が適用拡大されたら事業所が行う具体的な見直し内容としては、適用拡大要件に該当しないように所定労働時間を短縮してその分多くの短時間労働者を雇用するが32.6%と最も多い回答となった。次に短時間労働者の人材を厳選して今より長時間の労働をしてもらい、雇用する人数を減らすのが30.5%、賃金水準等を見直して適用不該当とするが24.3%となった。
  一方で、会社から社会保険が適用されないよう、労働時間を短くすることを求められた場合、労働者は、「現在の会社を辞めて、厚生年金・健康保険の適用対象になることのできる他の会社を探す」が29.6%、「分からない・何とも言えない」が29.3%、「受け容れる(現在の会社で働き続ける)」が26.7%、「正社員にしてもらえるよう交渉する」が10.4%となった。
  事業所側が自分たちの都合ばかりで労働時間や雇用人数を調整しようとしても、労働者側はそのとおりに受け入れてくれるとは限らないということをよく理解しておく必要がある。
● 72%が厚生年金・健康保険の被保険者になることは希望しない
  短時間労働者側が適用拡大をどのように考えているかというと、厚生年金・健康保険の被保険者になることを希望するかの質問に「希望する」割合が26.5%に対して「希望しない」の割合は72.0%であった。
  また社会保険の適用拡大に対して働き方を「変えると思う」割合が61.8%で、具体的内容については適用されるように収入・労働時間を増やすが26.7%、適用にならないように時間数を減らす14.5%、無回答が最も多く36.3%だった。
  これらの結果から、社会保険の適用が拡大されれば、より労働時間が短くなる、もしくは長時間化により正社員を望む、という二極化が進むことが予測される。二極化は、雇用環境としてはあまり望ましいものではなく、今後政府としても何らかの対策を考えていくことが必要ではないだろうか。
参考 独立行政法人 労働政策研究・研修機構
「社会保険の適用拡大が短時間労働に与える影響調査」結果
http://www.jil.go.jp/institute/research/2013/114.htm
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.09.17
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