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各省庁の平成26年度税制改正要望が出揃う
各省庁の平成26年度の税制改正要望が出揃った。政府・与党は、26年度税制改正を2段階で行い、今秋にも成長戦略第2弾として設備投資減税を前倒しで実施する考えだが、経済産業省などでは、その設備投資減税を視野に入れた要望が柱となっている。ここでは、その経産省と厚生労働省の要望を紹介したい。
● 経産省、設備投資減税など成長戦略関連が中心
  経済産業省の税制改正要望は、(1)生産性向上を促す設備等投資促進税制の創設、(2)事業再編を促進する税制の創設、(3)企業のベンチャー投資促進税制の創設、といった成長戦略関連の項目が中心となっている。
  経産省は、今後3年間で国内設備投資額年間約70兆円への回復を目指しており、「生産性向上を促す設備等投資促進税制」は、先端設備の導入、生産ラインやオペレーションの刷新・改善など「質」の高い投資について、即時償却・税額控除等の税制措置を講ずる。対象設備は、先端的な「機械・装置」に加え、生産性向上に資する「ソフトウェア」、「器具・備品」・生産ラインやオペレーションと一体となった「建物」なども対象とする。
  「事業再編を促進する税制」は、わが国では1つの事業部門に多くの事業者が存在し、その利益率は極端に低くなっている状況にあることから、自社の事業部門を切り出し、他社の事業部門と統合することで、規模の拡大や技術の補完による新市場展開・競争力強化を実現し、(1)有望事業・産業の成長加速、(2)グローバル市場での勝ち残りを目指す企業について、課税負担の軽減措置を講じる制度の創設を求める。
  「企業のベンチャー投資促進税制」は、事業拡張期のベンチャー企業への資金供給拡大のため、経営・技術指導を行うベンチャーファンドへ出資する企業について、投資リスクに備えるための税制上の支援措置を講じる。ベンチャー企業が大きく成長するためには、事業拡張期において、製品等の量産体制確立や販路拡大等が必要なため、大規模な資金供給能力や経営ノウハウを持つベンチャーファンド・事業会社の支援が有効との考えだ。
● 厚労省、大法人にも交際費課税の特例の適用を要望
  厚生労働省の平成26年度税制改正要望では、医療関係や就労促進関係の要望事項のほか、生活衛生関係として交際費課税についての見直しを盛り込んだ。
  具体的には、中小法人の交際費課税の特例(800万円まで損金算入可能)を2年間延長するとともに、飲食店等における消費の拡大を通じた経済の活性化を図る観点から、現行では全額損金不算入とされる大法人についても、その適用範囲を含めて所要の見直しをするよう求めている。
  企業等の交際費支出については、1990年代初頭の約6兆円から近年は3兆円を割る水準まで半減し、飲食店等の需要にマイナスの影響を及ぼしている。交際費は、企業の大小を問わず、企業ビジネス上必要な経費であり、無駄な交際費を支出する状況にはないというのが経済界の声であり、従来の発想を転換し、経済の活性化の観点から、大法人も含め、交際費課税の緩和が求められている、との考えを示している。
  医療関係では、特定健診・保健指導の対象者の負担を軽減し、実施率の向上等を図るため、特定健診・保健指導に係る自己負担額の医療費控除の範囲を拡充することや、がん検診の受診や予防接種を促し、受診率や接種率を向上させるため、がん検診等に係る自己負担額の医療費控除の対象の拡充、社会保険診療報酬に係る非課税措置の存続、医療法人の社会保険診療以外の部分に係る事業税の軽減措置の存続などを盛り込んでいる。
  就労促進関係では、日本経済再生に向けた緊急経済対策の一環として平成25年度税制改正において拡充された雇用促進税制について、25年度における雇用促進計画の受付件数が増加傾向にあることから、この経済対策の効果が引き続き発揮されるよう当期の法人税額の10%(中小企業は20%)を限度として、雇用増加数1人あたり40万円の税額控除を行う現行措置の3年間延長を要望している。
参考
平成26年度税制改正に関する経済産業省要望(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2014/pdf/02_2.pdf
平成26年度税制改正要望事項(厚生労働省)
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000021637.pdf
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2013.09.17
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