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最高裁、非嫡出子の相続差別は違憲無効と判断
● 民法改正によって非嫡出子は「嫡出子の1/2」解消へ
  去る平成25年9月4日、結婚していない男女間に生まれた子ども、いわゆる非嫡出子(婚外子)の法定相続分が、嫡出子(戸籍上の夫婦間に生まれた子)の法定相続分の半分とされている法律は“違憲無効である”と最高裁判所は決定を下しています。これにより政府は、民法の改正が必要という考えを表明しました。
  現行の法律では非嫡出子の法定相続分は嫡出子の半分と既定されていますので、民法が改正されると、非嫡出子と嫡出子の法定相続分は同一になります。実現すると、相続対策および相続税対策に大きく影響を及ぼすことが考えられます。生命保険と相続対策は密接に関わってきますので、今後の動向に注目しておかなくてはなりません。
  たとえば相続財産が6,000万円、法定相続人が妻とその子どもである嫡出子1人と婚外子である非嫡出子1人である場合です。
  現行の法律では妻の法定相続分は3,000万円、嫡出子は2,000万円、非嫡出子は1,000万円となりますが、民法が改正されると妻3,000万円、嫡出子1,500万円、非嫡出子1,500万円となります。
● 事業承継や遺留分侵害対策にも影響が
  上記のケースで妻が先に亡くなっているなど子どもだけで遺産分割する場合なら、現行では嫡出子4,000万円、非嫡出子2,000万円ですが、改正によって嫡出子、非嫡出子ともに3,000万円ずつとなります。これにより、単純に受け取れる相続財産額の割合が変わるだけでなく、事業などをしている場合には事業承継にも大きく影響がでることが想定されます。また主な相続財産が住まいのみのような場合には、相続割合が対等になるために住まいを手放さなくてはならないといった事態も起こり得ます。
  その他、法定相続分が変更になることで遺留分にも影響が出てきます。遺言書の書き換えを含めた相続対策を見直す必要が出てきます。
  今日、先進国において、非嫡出子の法定相続分を差別するという法律が残っているのは日本のみ。民法が改正される可能性は、大きいのではないでしょうか?

  生命保険をセールスする際は、少なからず、顧客のプライベートに触れる機会も多くなります。その情報を得ることで、より適正な保険金額や受取人を導きアドバイスすることができます。今後は民法の改正動向をウォッチし、タイムリーな情報を顧客に提供できるよう準備したいものです。
  
飯田 道子(いいだ・みちこ)
海外生活ジャーナリスト/ファイナンシャル・プランナー(CFP)
  金融機関勤務を経て96年FP資格を取得。各種相談業務やセミナー講師、執筆活動などをおこなっている。主な著書には、「宅建資格を取る前に読む本」(総合資格)、「介護経験FPが語る介護のマネー&アドバイスの本」(近代セールス社)などがある。
  海外への移住や金融、社会福祉制度の取材も行う。得意なエリアは、カナダ、韓国など。
  
2013.09.19
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