>  今週のトピックス >  No.2698
介護保険の要支援サービスの行方は?
● 市町村主体の事業への移行案
  安倍内閣が主導する社会保障制度改革国民会議の報告書と、その実行に向けた法制化の骨子(プログラム法案骨子)に注目が集まっている。
  介護保険分野の改革では、特に関心が高いポイントの一つが「現行の要支援1・2の利用者を従来の個別給付から外し、市町村主体の事業に移行させる」という案だ。
  まず、基本的な制度の解説をしておこう。
  ここで述べる個別給付というのは、全国一律(一部例外あり)の基準・報酬に基づいて提供される現物給付(サービス給付)のことである。対象は、要介護認定で要支援・要介護と認定された人だ。現行の要支援1・2の場合、予防給付の形で利用者の一割負担(原則)によって介護予防サービスが提供されている。
  これに対し、市町村事業というのは、現行では地域支援事業にあたる。この地域支援事業というのは、市町村が主体となって個別給付以外の様々な事業を展開するものである。
  例えば、要介護認定を受けて「自立」(要支援・要介護に至らない人)と判定された人に対し、要介護にならないための予防施策などが提供されるといったケースがある。
  よく誤解されるのは、要支援1・2の人が地域支援事業に移行することで、「介護保険から外される」という見方だ。正確には、現行の地域支援事業にも介護保険の財源(介護保険料と公費)は使われており、完全に「介護保険から外される」ということではない。
  異なるのは、地域支援事業のうちの一部の財源比率が変わることである。地域支援事業のうち、地域包括支援センターの運営にかかる事業等については、2号保険料(40〜64歳以下の人の保険料)が組み込まれず、その分公費の割合が高くなる。だが、先に述べた自立の人の介護予防施策などは、要支援・要介護者への個別給付と財源構成に変わりはない。
● 新たな受け皿では、全て各市町村に委ねられる
  9月4日に開催された社会保障審議会・介護保険部会では、厚労省側から要支援者の新たな受け皿に関する案が提示されている。それによれば、現行の地域支援事業のうち、自立判定された人向けの介護予防施策の部分を再編成し、ここに受け皿を設けるとしている。
  具体的には、介護予防に加え、家事援助や外出支援、配食などの生活支援サービスを一体的に提供するというものだ。平成24年度改正で、地域支援事業の中に、介護予防と生活支援を一体的に提供する「介護予防・日常生活支援総合事業」が創設された。この部分が新たな仕組みのベースになると思われる。
  ただし、財源構成は変わらないとはいえ、従来の個別給付とは一線を画す点もある。最も大きいのは、個別給付ではサービス基準や報酬を国が定めるのに対し、新たな受け皿では全て各市町村に委ねられる点だ。加えて、財源構成が変わらないとはいえ、地域支援事業に使える上限割合が設定されている。
  つまり、市町村判断とはいえ、必然的に「使われるお金」は絞られる可能性が高い。国が「ボランティア等の互助的な資源の活用」をうたっているのも、こうした背景がある。
  結局、各市町村と住民との合意形成、つまり「どれだけのサービスを構築するのか」について地域ごとに詳細を詰めていくことが、今後は大きなポイントになってくる。
参考
厚生労働省「4.在宅医療連携拠点事業」
http://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/zaitaku/dl/h24_0711_01-04.pdf
田中元さんの新刊が好評発売中です!
「離れて暮らす親に元気でいてもらう本」
価格:1,600円(税込)
発行:自由国民社
詳しくは、自由国民社のサイトへ
介護離職は他人ごとではない!
老親の介護が必要になる前に、子ができることがたくさんあります。     
  介護福祉ジャーナリストとして、長年、介護の現場を取材されている田中元さんによる、離れて暮らす親の介護を考えるときにまず読みたい1冊です。
  親は確実に歳をとり、70代にもなれば老化は加速度的に進みます。 もし、離れて暮らす親の介護が必要になり、近くに介護者もいないとしたら、子であるあなたはどうしますか?
  本書は、老親とのコミュニケーションの取り方、高齢者の健康や食事、住居、家族、資産の管理など多岐にわたり、子どもがどうやって親の生活にひそむリスクを感知し、どのようにフォローしていくか、その具体的なポイントとケアの方法を詳しく紹介します。また、いざ介護が必要になったときの準備の仕方、離れている場合の介護保険など行政サービスの使い方も解説します。
  
田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.09.26
前のページにもどる
ページトップへ