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介護保険利用料「2割」負担案を国が提示
● 「一定以上所得者」は2割負担へ、対象案は2つ
  社会保障制度改革国民会議の報告書を受け、9月25日の社会保障審議会・介護保険部会において、厚生労働省より「一定以上所得者」に対する介護保険サービス利用料の2割負担の案が提示された。介護保険のスタート以降、利用料の1割負担は変わらず続いてきたが、ここに来て大きな変更が加わることになる。
  厚労省が提示している「一定以上所得者」の対象案は2つ。1つは、合計所得金額が160万円以上(年金収入のみの単身世帯で年金280万円)という案(案1)。この場合、被保険者全体の約20%に該当する。もう1つは、合計所得金額が170万円以上(年金収入のみの単身世帯で年金290万円)という案(案2)。こちらは、住民税課税者である被保険者の上位おおむね半分以上に該当することになる。
  ちなみに、介護保険料の段階で見た場合、案1・2ともに全6段階のうちの第5段階のほぼ中間に位置している。非課税層が1〜4段階であり、最上位の第6段階は合計所得金額が190万円以上。それよりも20〜30万円低いレベルで線引きが行われるわけだ。
  この案に対し、介護保険部会の一部委員からは「介護保険制度創設以来、初めて2割負担のシステムが導入される」ことへの影響を考慮したうえで、「限定された層から導入し、その状況を検証・分析しながら対象層を考えていくべきである」という意見が出されている。
● 在宅介護が広がる中での負担増に懸念も
  一方、医療保険の場合、70歳以上の高齢者については、平成18年10月から「現役並み所得者は3割負担」が導入されている。国民健康保険、あるいは後期高齢者医療制度の対象者である場合、世帯内に課税所得額が145万円以上の被保険者(現役世代の平均収入にあたる約386万円)がいると「現役並み所得者」の対象となるわけだ。
  医療サービスと介護サービスのとらえ方が異なるので一概に比較はできないが、ここで頭に入れたいのは、病院の入院機能が急性期に特化されつつある現在、症状は安定期にあるとは言っても相応に重篤化した人が在宅での療養につくというケースが増える点だ。在宅における介護保険サービスでも、訪問看護や訪問リハビリなど病院における医療機能の一部を担う場面が増えており、その傾向は今後も強まっていくことが予想される。
  つまり、医療→介護という機能の推移を川の流れに例えた場合、川上での機能が特化される中で、川下にあたる在宅介護(在宅療養)の範囲が拡大していく可能性がある。そこで最終的な受け皿となる「在宅からの通院(もしくは訪問診療など)」と「在宅での介護サービス利用」が同時に負担増となった場合、どのような影響が及ぶのかが問題となる。
  すでに通院等にかかる医療サービスに3割負担が適用される中、介護サービスへのしわ寄せは強まっている。その部分が「1割→2割」と負担倍増(厚労省は、高額介護サービス費があるので単純に2倍にはならないとしているが、在宅で受ける居宅サービスの総額は高額介護サービス費の対象に至らないケースが多い)となったとき、何が起こるのか。先の委員から出された「状況の検証・分析」は当然不可欠になってくるだろう。今回の2割負担案は、所得線引きの賛否を含めて今後も大きな論点になることが予想される。
参考
費用負担の公平化について(社会保障審議会・介護保険部会 平成25年9月25日)
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000024146.pdf
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.10.10
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