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平成26年4月からの消費税率8%への引上げを正式決定
● 民間投資活性化等のための税制改正大綱を公表
  政府は10月1日、臨時閣議において、来年4月の消費税率8%への引上げを確認するとともに、消費増税による景気への影響を緩和するため、約1兆円規模の減税となる民間投資活性化等のための税制改正大綱を決定した。
  注目されていた復興特別法人税の1年前倒し廃止は本年12月中に結論を得る方針のほか、消費増税に伴う低所得者向けの現金給付や住宅購入者向けの現金給付は、5兆円規模の経済対策の中で手当てされる。
  約1兆円規模の税制改正は、(1)企業が平成27年度末までに、先端設備等を導入した場合、即時償却か5%の税額控除を認める生産性向上設備投資促進税制の創設、(2)企業が給与総額を2%(現行5%)増やした場合、増加分の10%を税額控除する所得拡大促進税制の緩和、(3)中小企業投資促進税制について、160万円以上の機械への投資時に税額控除する対象企業を、資本金3千万円以下から1億円以下に拡大する、(4)研究開発税制について、研究開発費の増加分に応じた税額控除で、控除率を5%から最大30%に引上げ、などが盛り込まれている。
● 法人実効税率の引下げは「速やかに検討を開始」
  投資促進税制は、控除率は平成27年度末までは5%だが、それ以降平成28年度末までは4%となり、企業に早期の投資を促す。雇用促進税制も、適用条件を、平成25〜26年度は「2%以上」、平成27年度は「3%以上」、平成29年度までは「5%以上」とするなど、早期の適用が有利となる。
  経済界が強く求めている法人実効税率の引下げについては、「速やかに検討を開始する」ことを明記。復興特別法人税を1年前倒しで今年度末に廃止しても、法人実効税率は38.01%(東京都)から35.64%に下がるに過ぎない。経済界が求める国際的標準レベルである25%程度への引下げには程遠い。安倍首相は平成27年度からの引下げを念頭に置いているとみられるが、代替財源等から反対する財務省の出方が注目される。
● 低所得者層への簡素な給付措置などを閣議決定
  同日の閣議では、消費増税に伴う新たな経済対策とともに、負担緩和のため、暫定的・臨時的に実施する低所得者に対する総額約3,000億円の簡素な給付措置や、住宅ローン減税の拡充措置の効果が限定的な所得層に対する総額約3,100億円の住宅取得に係る給付措置などの対応を閣議決定した。
  消費税率が8%である期間に行われる簡素な給付措置の対象者は、市町村民税(均等割)が課税されていない者(同税が課税されている者の扶養親族等を除く)だが、生活保護制度内で対応される被保護者等は対象外。給付額は一人1万円(1年半分を1回の手続きで支給)。ただし、老齢基礎年金(65歳以上)、障害基礎年金、遺族基礎年金の受給者等、児童扶養手当法による児童扶養手当の額等の改定の特例に関する法律の対象となる手当の受給者等は、一人につき5千円が加算される。
  一般の住宅取得に係る給付措置の給付額は、都道府県民税率4%の場合の住民税(都道府県)所得割額が、6.89万円以下が30万円、6.89万円超8.39万円以下が20万円、8.39万円超9.38万円以下が10万円。対象者は、引上げ後の消費税率が適用され、一定の質が確保された新築住宅又は中古住宅を取得し自ら居住する者。ただし、住宅ローンを利用せずに住宅を取得する者については、50歳以上であって、都道府県民税率4%の場合の住民税(都道府県)所得割額が13.3万円以下の者に限定される。また、被災者の住宅再建に係る総額約500億円の給付措置も、一定の計算を基に行われる。
参照 自由民主党・公明党「民間投資活性化等のための税制改正大綱」
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/pdf116_1.pdf
財務省「消費税率及び地方消費税率の引上げとそれに伴う対応について」
http://www.mof.go.jp/comprehensive_reform/251001.pdf
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2013.10.15
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