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育児休業給付 休業前賃金の67%支給へ引き上げ検討
● 2014年度の秋以降から開始したい意向
  厚生労働省は、雇用保険の育児休業給付について、現在、休業前賃金の50%支給としているが、この制度を見直して、最初の半年間に限り67%支給に引き上げる方向で調整に入ることを発表した。労働政策審議会の部会において改正案を示し、2014年度の秋にも新制度を始めたい意向がある。
  所得保障をさらに拡大することで、夫婦ともに育児休業を取りやすくすることがそもそもの狙いである。厚生労働省では、子育て支援に関して、さまざまな施策を打ち出しているところだが、男性の育児休業の促進のためにその障壁となる収入面をカバーしようとする政府の狙いがどのような結果になるか興味深いところである。
● 男性が育児休業を取得できない本当の理由
  男性の育児休業の取得率を上げることは、ここ数年の政府の重要な課題であるため、今回の育児休業給付の支給率の引き上げは、低迷する男性の育児休業の取得率アップに是非ともつなげたいところである。
  実際に平成24年度の育休取得率は、女性の83.6%に対し、男性は1.89%に過ぎない。「イクメン」という言葉は一部広まりつつあっても、実際に男性で育児休業をしっかりと取得して子育てをしている人は周囲を見渡してもまだまだ少ない。
  一方で、男性の育児休業を取得できない理由は「決して収入面ではない」という有識者の声も多く、実際に現場で働く人の印象も同じようである。
  現場の声として、主な理由は会社の風土によるものが大きいとのこと。実際に働き盛りで重要な役割を担っていることもあり、休める状況でもないという男性も多い。また育児休業の取得を申し出ても、上司や同僚が好意的には受け止めないような雰囲気が少なからずあるようなところもまだまだ多いのが現状である。
● 夫婦で半年ずつ育児休業を取得すればメリットが
  休業前賃金の67%への引き上げは、1日あたり日給の3分の2が支給される健康保険からの産前産後休業期間に支給される出産手当金と同じ水準にしているという。今回の新しい制度が適用になると、共働きの夫婦が半年ずつ交代で育児休業を取得すれば、最大で計1年間にわたり、夫か妻の育児休業前賃金の3分の2を受け続けることができるが、妻だけが育児休業をとる場合は半年で補償率が5割に下がってしまう。夫婦2人が育児休業を交代でとれば受け取る額は増えるので、今後政府としてもしっかりアピールしてこの新制度を普及させ、わかりやすい効果を出したいところではないだろうか。
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.11.11
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