>  今週のトピックス >  No.2726
在宅医療の推進はどこまで叶うか?
● 1日あたりの在宅医療、17万人分から29万人分へ拡大なるか
  厚生労働省が「地域医療の推進」についての施策をいくつも打ち出している。大前提となるのが、2025年に向けた医療・介護機能の再編だ。2025年は、団塊世代が全員75歳以上の後期高齢者となる。その人々の療養の受け皿をどこに持ってくるかによって、医療や介護の体制のあり方も大きく変わることになる。
  国が掲げる再編の具体的内容としては、「急性期への医療資源の集中投入」とともに、「看取りを含め在宅医療を担う診療所等の機能強化」や「訪問看護等の計画的整備」を進めることであり、これによって「病気になっても職場や地域生活へ早期復帰」することを可能にするというものだ。目標数値としては、1日あたりの在宅医療等を現状の17万人分から29万人分へと拡大する方針を示している。
  在宅における療養については、国民側のニーズの大きさも強調されている。厚労省が掲げるデータによれば、「療養に関する希望」としては「自宅で」という回答が41.7%で、「医療機関で」の17.1%を大きく引き離している。また、終末期に関しても「自宅で」という回答(「必要になれば医療機関・緩和ケア病棟に入院したい」という回答も含む)が、平成20年の調査で63.3%にのぼっており、10年前に比べて5ポイント以上伸びている。「最期は自宅で」という意向の伸びは、裏返せば在宅医療・介護への期待感が高まっていることを示すと言っていいだろう。
● 亜急性期機能の位置づけがカギを握る!?
  だが、厳しい現状も無視できない。訪問診療(往診のような急患対象ではなく、計画的に訪問して医療を提供する体制)を実施している医療機関(病院+診療所)は、全体の半数にはるかに満たない。地方における診療所の医師自体が高齢化し、後継者不足で閉院という現状もある中、この数字を飛躍的に伸ばすことは容易ではないことは明らかだ。財務省はすでに「平成26年度の診療報酬」のマイナス改定を示唆しており、どんなに訪問診療への特化を図ろうとも限界がある。若い医師を訪問診療に呼び寄せ、24時間対応の体制などを築くことができるのか予断は許されない。
  もちろん、病院と在宅の間の緩衝機能がまったく整備されないわけではない。国が掲げる医療機能の再編イメージでは、現在の病床を「高度急性期」「一般急性期」「亜急性期等」と3つに機能分化するとしている。前者の2つについては、平均在院日数をそれぞれ「15〜16日程度」「9日程度」と設定している。現状の「19〜20日程度」と比較すると、「できるだけ早く退院してもらう」方向が強まるのは間違いない。だが、もう一つの「亜急性期等」については、平均在院日数は「60日程度」と、逆に大幅な延長が描かれている。
  この「亜急性期等」の位置づけがどうなるかが、実は大きなポイントになる可能性が高い。厚労省が示した「亜急性期(機能)」の定義は、「主として、急性期を経過した患者、在宅・介護施設等からの患者であって症状の急性増悪した患者に対し、在宅復帰に向けた医療を提供する機能」としている。「在宅復帰」を目的とする点は強調されているが、定義としては割と緩やかだ。同病床数の目標は35万床と全体の3割程度だが、在宅医療との関係を含め、その機能の位置づけが今後注目される。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.11.14
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