>  今週のトピックス >  No.2731
新規学卒者の3人に1人が“3年以内に離職”の現状
● 就職後3年以内の離職率、高卒は39.2%、大卒は31.0%
  大卒で入社した者について、“3年後には3人に1人が離職している”という話を聞くことがよくあるわけだが、その事実を裏づける若年者雇用関連データが先日、厚生労働省より発表になった。
  データによると、高校卒業3年後の離職率は39.2%と前年度(35.7%)より3.5ポイント高くなっており、大学卒業3年後の離職率については31.0%とこちらも前年度(28.8%)より2.2ポイント高くなっている(いずれも平成22年3月卒業者)。
  今回はこの若年者雇用関連データの離職率について詳しくみていくとともに、企業側は、若者の離職率を改善するためにどうすればいいのかを考えてみたいと思う。
● 大卒者「宿泊業、飲食サービス業」は51.0%という高い離職率
  離職率について主な産業別にみてみると、業種によって離職率が大きく異なることが明らかとなっている。高卒と大卒に分けてその傾向をみていくと、高卒は「小売業」「教育、学習支援業」「生活関連サービス業、娯楽業」「宿泊業、飲食サービス業」などで全体の平均値を上回っており、特に「小売業」は50.0%、「教育、学習支援業」は60.1%、「生活関連サービス業、娯楽業」は62.1%、「宿泊業、飲食サービス業」は66.6%という高い離職率となっている。
  大卒の場合、全体の平均値を上回っている業種としては「不動産業、物品賃貸業」「教育、学習支援業」「生活関連サービス業、娯楽業」「宿泊業、飲食サービス業」などがあり、「不動産業、物品賃貸業」は39.6%、「生活関連サービス業、娯楽業」は45.4%、「教育、学習支援業」は48.9%、「宿泊業、飲食サービス業」については51.0%という高い離職率となっている。
  いずれにしても「小売業」「宿泊業、飲食サービス業」「生活関連サービス業・娯楽業」「医療、福祉」といった広い意味でのサービス業については離職率が高い状況にあるといえる。
● 新卒者が定着するような職場環境づくりを
  離職率の高い業種に限らず、若年者の早期の離職は企業側および従業員側にとっても大きなマイナスである。企業側は、せっかく採用コストとたくさんの時間を費やしても、あっという間に若年者に退職されてしまったらそれまでの投資は無駄になってしまうし、その損害は大きいといえる。
  従業員側からすれば、いざ入社してみたら「こんなはずではなかった」という話をよく聞くが、それはやはり実際の労働時間や仕事内容、そして社内の人間関係なども大いに影響しているようだ。
  業種によっては現実的には難しいところもあると思うが、離職率の高さを解消するには、やはり広い意味での職場環境、そして労働環境を改善していかなければならないことは確かである。
  一般的に離職率が高い業種は常に人手不足のため、とにかく採用することには力を入れているが、そのあとの丁寧な教育や人材育成という部分まで手がまわっていないことが多く、せっかくやる気をもって入社してきても結果的に3年も経たずに退職してしまうという人も結構いると思われる。
  最近になって、「ブラック企業」という言葉が、かなり多くの人々に認識されるようになってきた。若者の離職率が高いことは、ブラック企業の特徴の1つと捉えられてしまいがちなので、厚生労働省による新入社員の定着支援などを上手に活用して、若年者の離職率の改善につとめていただきたいと思う。
参照 厚生労働省 若者雇用関連データ
http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/12.html
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2013.11.25
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