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平成24事務年度の法人の申告漏れ額、15%減の9,992億円
● 実地調査件数は通則法改正の影響で前年比27%減に
  国税庁がこのほど公表した今年6月までの1年間(平成24事務年度)における法人税調査事績によると、不正計算が想定されるなど調査必要度の高い9万3,000法人(前年度比27.4%減)を実地調査した結果、うち約73%にあたる6万8,000件(同26.0%減)から総額9,992億円(同15.0%減)の申告漏れを見つけた。調査による追徴税額は2,098億円(同3.6%減)。調査1件当たりの申告漏れは約1,071万円(同17.2%増)となった。
  実地調査件数は、1月の国税通則法の改正で、課税理由の説明などが原則義務化されて事務作業量が増加した影響から、1件当たりの調査期間が平均2.6日伸びたため、大きく減少した。
  また、調査したうちの18.3%(不正発見割合)に当たる1万7,000件(前年度比32.1%減)が故意に所得を仮装・隠ぺいするなどの不正計算を行っており、その不正脱漏所得金額は2,758億円(同9.6%減)だが、不正1件当たりの不正所得金額は約1,613万円(同33.0%増)と3年ぶりに増加した。
● 業種別の不正割合では「バー・クラブ」が11年連続のワースト1位
  不正を業種別(調査件数350件以上)にみると、不正発見割合の高い10業種では、「バー・クラブ」が45.4%で11年連続のワースト1位。「バー・クラブ」は、近年25年間で24回1位(唯一2001年度がワースト2位)という不名誉な記録を持つワースト業種の常連。以下、前年3位の「パチンコ」(29.8%)、同5位の「土木工事」(29.1%)、同4位の「自動車修理」(28.8%)、同2位の「廃棄物処理」(28.4%)の順で続く。
  一方、1件当たりの不正所得金額が大きい10業種では、1位は前年ランク外の「非鉄金属製造」の5,626万円、2位は前年まで2年連続トップの「パチンコ」の5,039万円、3位は同ランク外の「電気通信機械器具卸売」(3,524万円)、4位は同10位の「自動車・同付属品製造」(3,145万円)、5位は同ランク外の「貿易」(2,849万円)と続く。不正発見割合でワースト1位の「バー・クラブ」は1,399万円で同6位からランク外となった。
● 赤字法人調査で1割強の約4,000件が黒字に転換
  平成24事務年度における法人の黒字申告割合は27.4%と2年連続で増加したが、低水準は変わらず、7割強の法人が赤字だ。このような状況に便乗して実際は黒字なのに赤字を装う企業が後を絶たない。
  上記の平成24事務年度中に法人税の実地調査をした9万3,000件のうち、ほぼ4割に当たる3万7,000件が無所得申告法人の調査に充てられ、うち1割強(12%)の約4,000社が実際は黒字だったことが判明している。
  調査結果によると、実地調査した無所得申告法人3万7,000件のうち、約7割にあたる2万6,000件から総額4,803億円にのぼる申告漏れ所得金額を見つけ、加算税79億円を含む416億円の税額を追徴した。調査1件当たりの申告漏れ所得金額は1,288万円となる。
  また、無所得申告法人を実施調査したうちの22.3%にあたる約8,000件は仮装・隠ぺいなど故意に所得をごまかしており、その不正脱漏所得金額総額は1,516億円にのぼった。不正申告1件当たりの不正脱漏所得金額は約1,819万円となる。
  平成24事務年度の無所得申告法人調査は、実地調査件数が国税通則法改正の影響で前年度比32.6%減、申告漏れ件数も30.6%減とともに大幅減少となった。調査の結果、黒字となった法人が約4,000社あったわけだが、調査1件当たりの申告漏れ所得1,288万円は、前年度から16.8%増加し、法人全体の調査1件当たりの申告漏れ所得金額1,071万円を大幅に上回った。ここに、赤字の仮装などの観点から、無所得申告法人に対する調査を重点的に実施する背景がある。
参照 国税庁「平成24事務年度 法人税等の調査事績の概要」
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2013/hojin_chosa/index.htm
国税庁「平成24事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要」
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2013/hojin_shinkoku/index.htm
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2013.11.25
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