>  今週のトピックス >  No.2734
大胆な改革迫られる社会福祉法人
● 会計検査院、特養老人ホームの内部留保にメス
  既存の社会福祉法人(以下、社福)について、そのあり方を問う改革が進もうとしている。社福は多様な社会福祉事業を営むことを目的として認可されている法人であり、平成24年度において、認可数は1万9,810におよぶ。高齢者にとっては介護サービスなどを担う重要な受け皿であり、営利法人が着手しにくい分野の福祉なども担ってきた。公益性が高い分、各種優遇税制や補助金交付の対象となっており、その収益をどのように社会貢献に結びつけるかが問われる存在でもある。
  その特異とも言える社福のあり方に関し、昨今の社会保障制度改革の流れの中で、大きなメスが入ろうとしている。象徴的な出来事の一つが、今年10月22日付で会計検査院から厚労大臣に対して提出された意見書だ。
  これは、社福が運営する特養ホーム(特養ホームは営利法人の参入は認められていない)における各種積立金などの財務状況の透明性が十分に図られていない点を指摘したもの。
  特養ホームについては、その多額の内部留保が各種公益事業や職員の処遇改善に活用されていないといった指摘が国の検討会でも上がっており、加えて老朽化を迎えている施設の改修等を目的とした特別積立金の透明性なども一部問題となってきた。また、政府の規制緩和策の流れにおいて、規制改革会議などでは「特養ホームの運営を民間の営利法人にも拡大すべきでは」という意見も出ている。その中で出てきた今回の会計検査院の意見書は、特養ホームだけでなく、社福運営全体の見直しに拍車をかける可能性がある。
● 社会保障制度改革の中で社会福祉法人に求められるものは?
  こうした状況下、厚労省は9月27日付で「社会福祉法人の在り方等に関する検討会」をスタートさせた。主な論点としては、世帯の高齢化や貧困など福祉ニーズが多様化している中で、経営の透明性を確保しつつ、いかに諸ニーズに対応すべきかが掲げられている。
  一つの大きなポイントは、福祉ニーズの多様化が既存のサービスでは対応できない隙間を生み、その部分への支援をいかにきめ細かく行うかという点にある。例えば、介護分野であれば、既存の介護保険サービスでは対応できない部分について、民間法人などによる自主事業が受け皿となっている。ただし、公費や社会保険財源が投入されない事業については、相応の対価を利用者に求めることになる。問題は貧困層などを対象とした「対価を求めにくい事業」をどうするか。ここに公益性の高い社福の使命があると言っていい。
  検討会が掲げている「さらなる取り組み」の具体像としては、生活困窮者に対するワンストップ相談窓口の設置や物品支給、あるいは地域の複数の社福の出資によって民間基金を作り、福祉人材の育成に活用するといったケースがある。いずれも幅広く地域にアプローチすることが必要であり、とかく「特養ホームを運営していればいい」という施設依存型の体質では対応していくことは難しい。
  つまり、背景には、国が進めようとしている「施設から地域包括ケアへ」という流れがあり、そのランディングにかかる衝撃をいかに緩和するかという部分に社福のあり方が求められていることになる。来年度から加速する様々な社会保障制度改革の中で、今回の検討会が示す方向性は極めて大きいものがある。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2013.11.28
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