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火山噴火時の企業のリスクマネジメント
  気象庁によると、日本には全世界の活火山の約7%にあたる110の火山が全国に分布しており(北方領土や海底火山を含む)、このうち日本国民が直接被害を受ける可能性のある火山は約80と言われています。また、日本列島の地盤は平成23年3月11日の東日本大震災を契機に大きく変化し、火山噴火を誘発する可能性が高まったとも言われており、「今後数年間は警戒が必要」とする研究結果もあります。そんな状況におかれている中ですが、富士山などの火山の噴火対策をBCP(事業継続計画)の観点から実際に策定している企業は少ないのが現状です。
  火山噴火によって想定されるリスクは主に3つあります。まずは、@「噴火警報」によるリスクです。この警報は気象庁によって発表されるものですが、これによって避難を余儀なくされる場合、長期間にわたって該当地域に戻れない恐れがあります。職場に長期間戻れないことで、当然、事業継続に支障が出ることが想定されます。
  次にA「拠点の立ち入り禁止」によるリスクです。溶岩流等の被害に遭った地域の拠点は長期にわたって利用できない恐れがあります。たとえば、2000年の三宅島の噴火では、2005年まで全島避難が解除されませんでしたし、現在でも一部に立ち入り禁止区域が設定されています。今後富士山が噴火した場合に立ち退く必要が生じる可能性のある地域は、山頂から半径約30km圏内と予想されています。
  そしてB「火山灰」によるリスクです。火山灰によって企業の「クリーンルームの機能不全」や「物流の停止・遅延」などが想定されます。たとえば、富士山が噴火した場合、100km以上離れた房総半島にまで降灰することが想定されており、影響を受ける地域は広範囲に及びます。その結果、一般道はもとより東海道新幹線や東名・新東名・中央高速道路などの主要な幹線道路の遮断に加え、成田空港や羽田空港が一定期間、航空貨物の離発着に使用できない恐れがあります。さらに火山灰の粒子による電波障害やショートによって発生する電子機器の被害、火山灰の荷重による送電線の断線の可能性もあります。これらによって、流通経済が破綻し、食料不足の問題も起きるかもしれません。
  こうした噴火による被害は、自社が直接被害を受けなくても、取引先が被災した場合も間接的に受ける可能性があります。
  これらの噴火リスクにBCPの観点から備えるには、地震対策をベースに代替拠点での活動や業務の社外委託などを検討しておくことや、損害が発生した場合の補償として保険やデリバティブの活用、従業員を安全に避難・帰宅させるための手段の確保なども検討しておくことなどが求められます。
  大都市圏に被害がおよぶ活火山の爆発は、世界的にもこれまで例がないと言われています。地震と同様に、噴火時のリスクについても考慮しておくことが重要でしょう。
参照 内閣府ホームページ「防災情報のページ」
大規模火山災害対策への提言
http://www.bousai.go.jp/kazan/kouikibousai/
富士山火山防災マップ 富士山火山防災協議会
http://www.bousai.go.jp/kazan/fujisan-kyougikai/fuji_map/index.html
気象庁ホームページ:噴火警報レベルとは
http://www.seisvol.kishou.go.jp/tokyo/STOCK/kaisetsu/level_toha/level_toha.htm
2013.12.16
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