>  今週のトピックス >  No.2746
新株予約権付社債(転換社債)に脚光、7年ぶりの高水準
  企業が新株予約権付社債を使って資金を調達する動きが広がってきた。トムソン・ロイター社によると、今年1月から12月9日までの日本企業の新株予約権付社債の発行金額は合計6,510億円となり、前年比でほぼ倍増となっている。これは2006年以来7年ぶりの高水準で、来年も株式市況の好調が背景となり、6,000億円程度の発行予定という。新株予約権付社債にどのような魅力があるのか探ってみた。
● 新株予約権付社債とは
  新株予約権付社債(転換社債)は、債券と株式の特徴を併せ持つ金融商品である。社債をいつでも株式に転換することができる一方、株式に転換せずに債券のまま満期まで保有すれば、元本を現金で受け取ることもできる債券である。金利は普通社債と比べると低いのが一般的だ。
  <企業にとってのメリット>
    1.  発行企業は、普通社債より低い金利で発行できる。最近は利息なしで発行しているケースも多く、企業にとって金利コストを大幅に軽減できる。
    2.  株価が転換価格(株式に転換できる価格)を上回れば、社債から株式に転換する投資家が増えるため、発行企業は社債の償還金額を返済しなくてよい。
    3.  新株予約権付社債は、当初社債として発行されるため、公募増資のような株式の希薄化が抑えられることになる。
  <投資家にとってのメリット>
  株式が転換価格を上回れば、転換社債は株価に連動して値上がりし、キャピタルゲイン(値上がり益)を得られることになる。逆に株価が値下がりした場合でも、債券としての価値が下値を支えるため、株式ほど値下がりするリスクの少ないことがメリットとなる。株式に転換せずに債券のまま保有すれば、利子や償還金も得られることになる。
● 社債に投資する際の注意点
  社債の価格は株価に連動するため、株価が値下がりすれば社債の価格も下がり、途中売却すると、元本割れを起こすこともある。また、発行する企業が倒産すると、投資した資金が返ってこないこともある。投資する際には、格付けなどを参考に財務状況を確認したい。直接社債を購入せずに、この社債を組み入れた投資信託などを購入するのも一案である。
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2013.12.19
前のページにもどる
ページトップへ