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平成26年度税制改正大綱、景気回復の後押しなるか!?
● 軽減税率は「税率10%時」のあいまい表現
  自民、公明両党は平成25年12月12日、平成26年度税制改正大綱を決定した。中心は、通常の年度改正から切り離して25年10月1日に決定した「民間投資活性化等のための税制改正大綱(秋の大綱)」に盛り込まれていた企業減税だが、消費の拡大を図る観点から、交際費課税の見直しを行い、大企業にも飲食のための支出の50%の損金算入を認めるなどの措置を加えたほか、復興特別法人税の1年前倒し廃止も盛り込まれた。
  注目されていた生活必需品の消費税率を低く抑える軽減税率の導入については、「税率10%時に導入する」という文言で決着した。平成27年10月の消費税率10%への引上げ時と同時に軽減税率導入を求める公明党に対し、税収減や事業者の事務負担増などで導入に否定的だった自民党だが、軽減税率導入は引上げと同時か、それ以降なのか曖昧な表現で合意。導入時期については平成26年12月までに結論を得て、平成27年度与党税制改正大綱にて決定する運びとなった。
● 中心は「秋の大綱」の決定事項
  秋の大綱の決定事項が平成26年度税制改正大綱にも盛り込まれた。主なものとして以下の4つがある。
 (1)  企業が平成27年度末までに先端設備等を導入した場合、即時償却か5%の税額控除を認める生産性向上設備投資促進税制の創設
 (2)  企業が給与総額を2%(現行5%)増やした場合、増加分の10%を税額控除する所得拡大促進税制の要件緩和
 (3)  中小企業投資促進税制について、160万円以上の機械への投資時に税額控除する対象企業を、資本金3,000万円以下から1億円以下に拡大
 (4)  研究開発税制について、研究開発費の増加分に応じた税額控除で、控除率を5%から最大30%に引上げ
  投資促進税制は、控除率は平成27年度末までは5%だが、それ以降平成28年度末までは4%となり、企業に早期の投資を促す。所得拡大促進税制も、適用条件を、平成25〜26年度は「2%以上」、27年度は「3%以上」、28年度までは「5%以上」とするなど、早期の適用が有利となる。
● 軽自動車税の引上げや給与所得控除の上限の引下げ
  車体課税の見直しについては、自動車税と軽自動車税に燃費性能に応じた新たな課税措置を導入する。
  業界団体から反対の声が強かった軽自動車税の税率引上げ問題は、軽自動車・二輪車ともに引上げで決着した。平成27年4月以降に新規取得される四輪等の新車の年税額は、自家用乗用車が現行の7,200円から1万800円に、自家用貨物車が4,000円から5,000円に引き上げられる。また、原動機付自転車(50cc以下ミニバイク)は1,000円から2,000円に、125〜250cc以下のバイクは2,400円から3,600円にそれぞれ引き上げられる。
  給与所得控除については、現行水準が実際の給与所得者の勤務関連支出に比しても、また、主要国の概算控除額との比較においても過大となっていることから、漸次適正化のための見直しが必要とした。具体的には、平成28年は給与等の収入金額が1,200万円を超える場合の給与所得控除の上限を230万円とし、平成29年以降は同1,000万円を超える場合は同220万円とする。
● 交際費の損金不算入制度も見直し
  交際費の損金不算入制度については、(1)交際費等の額のうち、飲食のために支出する費用の50%を損金に算入する、(2)中小法人に係る損金算入の特例について、(1)との選択適用とした上で、その適用期限を2年延長する、との見直しを行った。(1)の飲食のために支出する費用には、専らその法人の役員、従業員等に対する接待等のために支出する費用、いわゆる社内接待費は含まない。
  そのほか、消費税の簡易課税制度のみなし仕入率についても見直しが行われ、金融業及び保険業は第5種事業に変更、みなし仕入率は60%から50%に改正する。
※平成26年度税制改正大綱については、国会を通過するまでは確定事項ではありません。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2014.01.06
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