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国民年金保険料の徴収、強化の方向に
● 国民年金保険料の納付状況と滞納者に対する対応
  平成25年12月13日に開催された社会保障審議会年金部会の報告書によれば、平成24年度の国民年金の納付率は59.0%で、政府目標の60%を4年連続で下回っている。ちなみに、厚生労働省が「平成25年10月末現在 国民年金保険料の納付率」で公表した強制徴収の実施状況は以下のとおりである。
最終催告状 督促状 財産差押
25 年4 月〜10 月分 59,584件 19,804件 4,039件
24 年4 月〜10 月分 42,478件 8,378件 2,924件
※最終催告状… 強制徴収の対象者に対し、納付書とともに送付する催告文書。
※督促状… 最終催告状送付後、指定期限までに未納の者に納付を督促する文書(国税通則法)。督促状の指定期限までに納付されない場合、滞納処分が開始される。
● 長期間滞納している高所得者から狙い撃ち
  国民年金は所得の無い人まで制度の対象としているため、経済的に保険料を負担できない場合に備え、免除や猶予の制度を設けている。しかし、現実には支払いが可能であるにもかかわらず、保険料を納付せず、免除や猶予の申請もしない滞納者が多数いる。滞納者を減らすための取り組みとしては、
  ア. 保険料の納付への理解の促進(年金教育、広報など)
  イ. 納付しない人への説得・勧奨(電話・手紙・戸別訪問による納付督励など)
  ウ. 制度と運用の両面からの納付しやすい環境整備(後納制度、口座振替など)
  エ. 強制徴収(督促、差押など)
  などがある。所得、納付状況等に応じて滞納者を区分し、最適な組み合せでア〜エの取り組みを強化することが重要である。
  強制徴収を行う場合の徴収コストが100円当たり90円程度かかっていること、滞納者の中には低所得もいることなどを考慮すれば、すべての滞納者に直ちに強制徴収を実施することには、現時点では困難が多い。
  まずは長期間保険料を滞納している高所得者などに、一定の基準を設けて督促を実施することから始め、その対象を順次拡大することを目指す。強制徴収の対象の詳細について、厚生労働省からの公式発表はないが、マスコミ報道等からは、所得は年収400万円以上、滞納期間は13カ月以上とすること等が推測される。
● 公的年金の保険料納付のメリットの周知徹底が課題
  上記報告書では、保険料納付の意義や保険料納付のメリット(例:一生涯老齢基礎年金を受けられることや、給付費の2分の1は国庫負担であること等)を分かりやすく説明することも必要であるとしている。
  高齢者世帯の所得の約7割を公的年金が占め、また高齢者世帯の約6割が年金収入だけで生活しており、老後の生活の支えとして公的年金は大きな柱となっている。
  特に、老後を老齢基礎年金に頼ることの多い自営業者等の国民年金第一号被保険者にとっては、保険料の未納は切実な問題ともなる。
  長寿命化や年金の給付抑制の動きから、今後とも個人年金等の老後に備えた商品へのニーズは増加すると思われる。お客様と接する中で、公的年金制度の正しい理解向上にも貢献したいものである。
参照 厚生労働省ホームページ「社会保障審議会年金部会年金保険料の徴収体制強化等に関する専門委員会報告書のとりまとめについて」
  
古賀輝行(こが・てるゆき)
古賀社労士・FPオフィス 代表
〒169-0075
東京都新宿区高田馬場2−9−1 天野ビル3階
E-mail:kogasrfp26-22@ae.auone-net.jp
1951年2月22日生まれ(62歳)。損害保険会社に26年間、生命保険会社に12年間勤務後、2011年退職を機に個人事務所「古賀社労士・FPオフィス」を立ち上げる。
客先企業の顧問社会保険労務士としての業務のほかに、ファイナンシャル・プランナー(FP)として、ライフプラン、生命保険、社会保険の相談業務やセミナー講師を行っている。
  
  
2014.01.27
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