>  今週のトピックス >  No.2763
高額療養費制度の周知に、企業側からの積極支援を
● まだまだ低い、高額療養費の認知度
  このたび全国健康保険協会(協会けんぽ)では、協会けんぽ加入者の方々を対象とした、「医療と健康保険に関する意識等調査」(平成25年9月実施)について報告書をとりまとめ、その結果を発表した。20歳から74歳の男女に対し「あなたは「高額療養費制度」をご存知ですか。」という質問を実施したところ、「名前を聞いたことはあるが、内容までは知らなかった」「今回はじめて知った」という回答が、あわせて38%にものぼった。
Q.「高額療養費制度をご存知ですか?」
 ・「利用したことがある」 23.5%
 ・「利用したことはないが内容を知っていた」 38.4%
 ・「名前を聞いたことはあるが、内容までは知らなかった」 27.8%
 ・「今回はじめて知った」 10.2%
  高額療養費制度の認知度が徐々に高まってきていることは確かであるが、まだ約4割の人が内容まで把握していないという事実は、今後取り組むべき課題だといえる。
● 高額療養費は、自ら申請することが要件
  高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が払い戻される制度である。
  この払い戻しについて、給付を受けるためには被保険者が自ら申請を行わなければならないという点がポイントで、そのことを分かっていない人が意外と多い。
  また、払い戻しのタイミングは、医療機関等から提出される診療報酬明細書(レセプト)の審査を経て行うので、診療月から3ヵ月以上かかるということも覚えておきたい。払い戻しまで時間を要するため、その間医療費の支払いに充てる資金として、高額療養費支給見込額の8割相当額を無利子で貸付する「高額医療費貸付制度」もあるので、協会けんぽに相談するのも1つの方法である。
● 企業側からの積極的な支援も必要
  全体的に高額療養費についての認知度は進んでいるが、男女を問わず20歳・30歳代の層に関しては、内容まで理解できていない人の割合がまだまだ高くなっている。2009年、2011年と比較して、利用者および認知している人の割合が増えてきているとはいえ、この点はもっと周知の方法などに工夫をこらしていかなければならないところである。
  また男女ともに、60歳・70歳代の利用率が高く、年齢が上がるにつれて「今回はじめて知った」が低くなっているのは、これまでの成果といえる。いずれにしても中小企業の人事部門などの担当者は、協会けんぽのサイトをよく確認しておき、役立つ資料などを従業員のために準備しておくと喜ばれるだろう。
  最後に私傷病などで長期間休んでいる従業員に対しては、このような高額療養費の利用などが予測されることから、人事部門の担当者から積極的に連絡をとり、申請の相談にのってあげることができれば、従業員の満足度も高くなるのではないだろうか。
参照 協会けんぽ「医療と健康保険に関する意識等調査」(平成25年9月実施)
http://www.kyoukaikenpo.or.jp/g1/h25-12/251217001
  
庄司 英尚 (しょうじ・ひでたか)
株式会社アイウェーブ代表取締役、庄司社会保険労務士事務所 所長
社会保険労務士 人事コンサルタント
  福島県出身。立命館大学を卒業後、大手オフィス家具メーカーにて営業職に従事。その後、都内の社会保険労務士事務所にて実務経験を積み、2001年に庄司社会保険労務士事務所を開業。その後コンサルティング業務の拡大に伴い、2006年に株式会社アイウェーブを設立。企業の業績アップと現場主義をモットーとして、中小・中堅企業を対象に人事労務アドバイザリー業務、就業規則の作成、人事制度コンサルティング、社会保険の手続及び給与計算業務を行っている。最近は、ワーク・ライフ・バランスの導入に注力し、残業時間の削減や両立支援制度の構築にも積極的に取り組んでいる。
公式サイト http://www.iwave-inc.jp/
社長ブログ http://iwave.blog73.fc2.com/
  
  
2014.02.03
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