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依然厳しい国保の財政状況、赤字額は3,055億円に拡大
● 前年より33億円の増加、苦しい財政状況が続く
  1月28日、厚生労働省は、国民健康保険(国保)の2012年度の実質収支(速報値)が3,055億円の赤字であると公表しました。赤字額は前年度から比べると33億円増となり2年ぶりに拡大、依然として厳しい財政状況が続いています。
   1.収支状況
       (1)  収入額 :  14 兆 1,575 億円(前年度比 3.2 %( 4,446 億円)増)
       (2)  支出額 :  13 兆 8,958 億円(前年度比 3.1 %( 4,142 億円)増)
       (3)  決算補填のための一般会計繰入金を除いた場合の精算後単年度収支差引額3,055 億円の赤字(赤字額は前年度から 33 億円増)
   2.被保険者数 :  3,466 万人(前年度から 54 万人減)
   3.国民健康保険料(税)収納率 :  89.86 %(前年度差 0.47 %ポイント上昇)
  収支状況をみてみると、支出では、高度な医療技術の普及で保険給付費が9兆2,149億円と対前年比(以下同)1.5%増。年々進む高齢化に伴い、75歳以上の高齢者医療への後期高齢者支援金は1兆7,442億円で9.6%増、介護保険への介護納付金が7,407億円で7.6%増と大きく伸びています。一方、収入では保険料の収納率が89.86%と前年より0.47%ポイント改善しましたが、税金による埋め合わせ分を除けば、赤字幅が広がる結果となりました。3,055億円の赤字と言っても、数字が大きすぎてイメージしづらいですが、いったいどうやって経済基盤を改善すればよいのでしょうか。
  この状況では今後、運営主体である市町村は保険料を上げるしかないようにも思えますが、それでは市町村の規模の違いにより保険料水準の格差がさらに広がってしまう懸念もあります。
  赤字の拡大には保険料の滞納問題も影響しています。保険料の収納率でみてみると、国民皆保険制度が始まった昭和36年以降、過去最低の収納率となってしまった平成21年の88.01%からもち直し89.86%まで上昇したものの、良好であった昭和48年の96.47%にはまだまだ及びません。
● 病院や診療所の料金引き上げにより、さらに追い打ちか
  また、この4月からは消費増税に伴う病院や診療所の料金引き上げで、初診料(現行2,700円)を120円、再診料(同690円)を30円値上げする案も出ているため、今後も赤字の額はさらに増えそうです。
  厚生労働省は、国保の財政を安定させるため、現行の市町村による運営を2017年度までに都道府県に移す方針をとっており、地方自治体との協議を始めています。しかし都道府県は国保の赤字構造の改善を条件としており、その財源が課題となっています。
  さらに、加入者の所得が高い健康保険組合へ負担を付け替えて財源を捻出しようとする動きもあるので、「国保の赤字」ではあるものの、健康保険組合の保険加入者にとっても他人事ではないようです。
参考
厚生労働省:平成24年度国民健康保険(市町村)の財政状況について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000035903.html
  
半田 美波(はんだ・みなみ)
社会保険労務士
みなみ社会保険労務士事務所 代表、株式会社サンメディックス 代表取締役
診療所で医療事務職として勤務した後、医療法人事務長、分院の設立業務担当を経て、2003年に医療機関のサポート会社・(株)サンメディックス設立。2004年にみなみ社会保険労務士事務所を設立。医療機関に詳しい社労士として知られる。
  
  
2014.02.10
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