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「特定居住用財産の買換え特例」の適用要件さらに厳しく
● 譲渡対価要件を1億5,000万円から1億円に引下げ
  平成26年度税制改正において「特定居住用財産の買換え特例」がさらに縮小されることになった。
  同特例は、マイホームを買い換える際、売った価額より買換え資産の価額の方が大きい場合に、譲渡所得税を将来に繰延べできる制度。例えば、1,000万円で購入したマイホームを5,000万円で売却し、7,000万円のマイホームに買い換える場合、通常なら4,000万円の譲渡益が課税対象になるが、本特例を適用すると売却した年には課税されず、買い換えたマイホームを将来譲渡するときまで譲渡益課税が繰り延べられる。
  あくまで「繰延べ」であり非課税になるわけではないが、目先の持ち出しがなくなることで動きやすくなるため、マイホームの買換えシーンには欠かせない特例となっている。
  この特例の適用期限は平成25年12月末までとされていたが、政府が閣議決定した平成26年度税制改正大綱において譲渡対価に係る要件を1億5,000万円から1億円に引き下げた上で、その適用期限を平成27年12月31日まで2年延長することが盛り込まれた。
● 平成26年1月以後の「譲渡」から適用
  この特定居住用財産の買換え特例は、ここ数年で適用範囲が徐々に狭まってきている。まず平成22年度税制改正では、譲渡資産の価額について「2億円以下」という金額要件が初登場した。この時点ではまだ適用除外のターゲットは一部の富裕層に限られていた感があるが、その後、平成24年度改正では「1億5,000万円以下」に引き下げられ、さらに今回「1億円以下」に引き下げられたことで、都市部に住む一般市民も譲渡対価要件を超える可能性が出てきた。
  ちなみに、ここでいう譲渡価額には、マイホームの譲渡対価だけでなく、固定資産税清算金も含まれる。売買契約書に記載された金額が1億円でも、固定資産税清算金を含めるとこれを超えてしまう場合には特例の適用はないので要注意だ。
  また、今回の改正は平成26年1月以後の「譲渡」からの適用であるため、足切りラインに引っかかって特例の適用除外となる場合には、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除など他の特例の適用を検討する必要がある。
  なお、平成26年度税制改正では、「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の繰越控除等の特例」及び「特定の居住用財産の譲渡損失の繰越控除等の特例」につても、その適用期限が平成27年12月31日まで2年延長されることになっている。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2014.02.17
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