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平成26年度診療報酬改定と入院環境の変化
● 入院医療の機能分化、在宅との連携強化がより明確に
  2月12日、中央社会保険医療協議会(中医協)において、平成26年度の診療報酬改定についての答申が行われた。国は、平成37年に向けて入院医療の機能分化と在宅との連携体制の強化を目標に掲げている。今回の改定では、このあたりのテーマに向けた実効性をさらに強めるというメッセージがはっきりと現れている。
  まず、急性期を担う病棟、特に看護師配置を7対1と手厚くした病棟について、その入院基本料を算定するうえでの要件が見直された。新たに加わった要件で注目されるのは、退院患者の「行き先」についてである。要件では、この「行き先」を示したうえで、それに該当する退院患者の割合が75%以上であることを求めている。その「行き先」については、自宅や居住系介護施設などいわゆる「在宅」が中心となっているが、病棟の一部も「行き先」として示されている。
  その「病棟」とは、「回復期リハビリテーション病棟(同入院料の届出を行なっていることが必要)」や「地域包括ケア病棟(同入院医療管理料の届出を行なっていることが必要)」、「療養病棟(在宅復帰機能強化加算の届出を行なっていることが必要)」となっている。実は、この3つの行き先について、やはり今回の改定では新設・見直しが行われている。
● 急性期以降の「早期在宅復帰」が要件に
  まず「回復期リハビリテーション病棟」だが、ここでは入院料の一部に関して体制強化加算(1日あたり200点)が設けられた。その要件として、リハビリ医療に関して一定のスキルがある常勤医師に加え、「退院調整に関する3年以上の経験を有する専従の社会福祉士1名以上」の配置が掲げられている。つまり、退院調整の機能強化について社会福祉士という国家資格取得者に焦点を当てたわけだ。
  次に「地域包括ケア病棟」だが、これは現在の「亜急性期入院医療管理料」を廃止したうえで新たに「入院医療管理料」が設定された病棟だ。要件としては、疾患別・がん患者リハビリテーションや在宅療養支援病院の届出などに加え、より高い入院料(1日あたりプラス500点)を算定する場合に「在宅復帰率が7割以上であること」などが示されている。
  さらに、療養病床に新設された「在宅復帰機能強化加算」(1日あたり10点)については、以下のような要件が定められている。たとえば、「1ヶ月以上入院して在宅に退院した患者が50%以上」(つまり、ある程度重症化した患者の回復に関する実績がある)、そのうえで「退院患者の在宅生活が原則1ヶ月以上」など。長期入院ケースが多い療養病床で、在宅復帰をうながす仕掛けを働かせたわけだ。
  これらを見ると、急性期から移る病棟でも、「在宅復帰のスピードを早める」機能が重視されていることになる。なお、「行き先」の中には介護保険サービスである老人保健施設も加わっているが、これも「在宅復帰」を強化した施設に限るという縛りが設けられている。いずれにしても、最終的に「在宅復帰」がキーワードになっていることは間違いない。
  そして現在、国会では地域包括ケアを主軸とした医療・介護関連の一括法案が審議されている。仮に可決成立すれば、今回の診療報酬改定の1年後となる平成27年度からの施行となる。これによって「行き先」の整備がどこまで進むのか。今回の改定と1年後の受け皿状況のバランスが果たして機能するのかどうかが、今後注目されることになる。
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田中 元(たなか・はじめ)
介護福祉ジャーナリスト。群馬県出身。立教大学法学部卒業後、出版社勤務を経てフリーに。高齢者介護分野を中心に、社会保障制度のあり方を現場視点で検証するというスタンスで取材、執筆活動を展開している。主な著書に、「2012年改正介護保険のポイント・現場便利ノート」、「認知症ケアができる人材の育て方」(以上、ぱる出版)、「現場で使える新人ケアマネ便利帖」(翔泳社)など多数。
  
2014.02.24
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