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相続税改正に向けて注目が集まる相続税の申告状況
  少し前になるが、昨年末に国税庁から平成24年中(1月1日〜12月31日)の相続・遺贈によって財産を取得した人に係る相続税の申告の状況が発表された。概略は以下のようになっている。
● 課税割合、課税価格、納税額ともほぼ横ばい
  平成24年中の相続の発生件数である、被相続人数(死亡者数)は125万6,359名で平成23年の実績に比べてほぼ横ばい、被相続人のうちで相続税の申告書の提出に係る被相続人数は5万2,394名と平成23年の実績に比べて微増という結果であった。その結果、課税割合(被相続人数に対する申告書の提出に係る被相続人数)も4.2%と対前年比でほぼ横ばいとなった。
  一方、相続税の納税者である相続人の方は、その人数が12万6,452名と対前年比101.0%と微増であったが、課税価格(10兆7,706億円)および納税額(1兆2,514億円)は、昨年の実績とほぼ同額であり、被相続人1人当たりの実績では、わずかに減少した。
● 課税対象となる相続件数は増加、1件当たりの税額は減少傾向に
  相続税課税の対象となった相続件数の割合、すなわち課税割合は上述のとおり対前年比で横ばいだったが、平成16年以来ほとんど変わらない状況となっている。ただし、その実数を見てみると、分母(被相続人数)は対平成16年実績比で22.3%、分子(課税対象となった相続件数=被相続人数)は同比20.9%とそれぞれ大きな増加が見られる。分母の増加は、そのまま社会の高齢化の進展の結果と考えられるが、その一方で課税対象の相続が増加していることも現実のようである。
  一方、課税価格および税額の推移は、納税対象が増加しているにもかかわらず同時期の比較でほぼ横ばいから微増という状況であり、相続1件当たりの税額が減少している傾向が見られる。
● 最近の約20年で相続財産の構成比に変化も
  さて、当調査結果では、平成6年から現在までの相続財産の金額とその構成比(土地、家屋、有価証券、現金・預貯金など)の推移を見ることができる。平成24年の相続財産の金額(各項目の合計金額)は平成6年と比較して、マイナス26.3%という大幅な減少であった。この金額の構成比の内訳としては、「土地」が平成6年比でマイナス52.3%という目立った減少となっている。
  これは当然、土地の評価額の大きな低下が主要な原因であると考えられるが、その一方で、「現金・預貯金額」は同比で98.5%増とほぼ倍額になっており、財産の保有の仕方が現金・預貯金という流動性の高いものに移行したという結果が見られる。
  もっとも、これもデフレという経済状況を反映した結果ということになるが、平成24年の相続財産の構成比における現金・預貯金額の割合は25.4%と、平成6年の9.4%に比べて16ポイントも上昇しており、以前に比較して流動性が高い状況にある傾向が見られる。ちなみに、有価証券については実額で8.7%増とわずかな増加にとどまっており、この約20年の間に保有財産のポートフォリオが大きく変化したことを見ることができる。
  平成27年以降の相続等から改正相続税法が施行され、課税対象となる相続件数の割合および納税額の増加が見込まれている。納税対策に対する関心が今後ますます高まることが予想されるが、保有財産の状況にあわせた効果的な納税資金対策の提案が、今後さらに重要になると考えられる。
参照:国税庁ホームページ 平成24年分の相続税の申告の状況について
http://www.nta.go.jp/kohyo/press/press/2013/sozoku_shinkoku/sozoku_shinkoku.pdf
2014.02.24
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