>  今週のトピックス >  No.2792
相続財産の分割について
● 相続人協議による財産分割は、合意があれば分け方に特別な制約なし
  相続が開始し、相続人が2人以上いる場合には相続財産を分割しなければならない。教科書的な言い方をすると、分割の方法は大きく分けて3つある。1.遺言による分割、2.相続人の協議による分割、3.家庭裁判所の調停・審判による分割である。
  相続の際には、何が相続財産なのか、ある当事者が相続人であるかどうかなど、複雑な問題が絡んでくることがあり、その場合は別途地方裁判所等で裁判を経る必要が出てくる場合もあるが、今回そのような場合は考えないこととする。
  相続人の協議による分割とは、文字通り、相続人同士が話し合い、誰がどれくらいの財産(または負債)を引き継ぐのかを決めることである。相続人同士が円満に話し合いできるのであれば、非常に望ましい分配方法である。
  この場合、財産の分け方には特に制約がない。例えば被相続人が夫で、妻・長男の2人が相続人となった場合に、例えば法定相続の規定通り半分ずつ財産を取得してもよいが、妻の老後を考えて、土地や建物の他に預貯金など、相続財産の9割を取得し、長男が残りの1割を取得するなども相続人全員が合意していれば自由に行うことができる。その際、長男が取り分を少なくし、その分妻の取り分が多くなるような分割をしても、長男から妻への財産の贈与と見なされることはなく、そこに贈与税がかかってくることもない。もちろん、相続した財産に応じてそれぞれに相続税はかかることがある。
● 年々増え続ける「遺産分割調停」件数
  さて、分割の協議がまとまらない場合はどうだろう。この場合は家庭裁判所に相続財産の分割を求める「調停」か「審判」の申し立てをすることになる。
  「調停」は、各相続人が、裁判官や調停委員を交えて話し合いを行い、円満な解決を目指すものである。「調停」で話し合いがまとまった場合、裁判の確定判決と同様の強い効力を持つことになる。
  話し合いがまとまらない場合は「審判」に移行する。裁判官が「審判」という形で、それぞれの主張や家庭裁判所調査官の調査結果を踏まえた上、遺産分割の内容を決定する。この「審判」に不服の場合には、高等裁判所に不服申し立てをすることができる。
  家庭裁判所に申し立てられる「遺産分割調停」の件数は平成24年で12,697件となっている(最高裁判所:司法統計)。この統計によると、昭和24年から調停の件数は増加しており、平成16年に1万件を超えた後も徐々に増え続けている。
  財産を残す側から考えてみると、自分の子供らが相続財産をめぐって争うような事態は起こってほしくないだろう。そこで、いわゆる「争続対策」にも目を向け、トラブルを未然に防ぎたいところだ。
昭和24年 昭和40年 昭和60年 平成15年 平成20年 平成24年
乙類調停事件
遺産分割に関する処分
853 3,439 5,141 9,582 10,860 12,697
最高裁判所:司法統計(平成24年)
2014.03.24
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