公益財団法人の日本医療機能評価機構から、3月26日、同機構が定期的に行っている「医療事故情報収集等事業」の「報告書」が公表されました。
報告書によると、2013年の1年間に医療機関から報告があった医療事故は3,049件となり、それまでの最高件数であった前年の2,882件から167件増で、調査開始以来、過去最多となりました。
このうち、厚生労働省が報告を義務付けている大学病院や特定機能病院など(報告義務対象医療機関)である274施設からは2,708件、任意で参加登録している病院など(参加登録申請医療機関)691施設からは341件でした。
報告義務対象医療機関から報告があった、2,708件の医療事故の概要の内訳は「療養上の世話」をしている際に起きたものが最も多く1,023件、次いで「治療・処置」718件で、この2つで半数以上を占めています(図1)。また、必ずしも因果関係が認められるものではありませんが、「事故の程度」として、死亡は216件、障害が残る可能性が高い状態になったケースも263件ありました(図2)。
報告義務対象医療機関からの報告 事故の概要(図1)
この医療事故情報収集等事業は始まってから9年が経過しました。当初は提供した事例がどのように活用されるのかわからない、という不安を感じていた医療機関が多かったようですが、収集した情報をもっと使いやすい形で広く提供して欲しいといった要望が増え、現在ではこれらのデータは医療安全の推進や医療事故の防止に役立っています。
2013年には、毎月1回、医療事故の事例と再発防止対策(医療安全情報)を提供しており、12月には、『ベッドからベッドへ移動の際、患者に挿入されていたドレーン・チューブ類が抜けた事故』についての医療安全情報が提供されました。同様の医療事故が2010年1月〜2013年10月までで11件報告されたことを受けて「共有すべき医療事故情報」「再発・類似事例の検討状況」を下記のように公表しています。
日本の医療の質は諸外国に比べて高いと言われています。しかし医療の現場では医師不足、看護師不足、長時間勤務や当直、夜勤、交代制勤務といった厳しい勤務環境などさまざまな課題も抱えています。そうした状況の中でも、医療事故情報の報告を受けて、ただ単に数値として見ているのではなく、失敗事例を共有し、それを活かして更に質の高い医療サービスの提供に努めています。