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政府「減価償却制度」の見直しを検討、「定率法」廃止か
● 現在、機械装置は「定額法」、「定率法」を選択適用
  法人実効税率の引下げが今後の税制改正の大きな焦点となるなか、その代替財源を模索する動きも加速している。4月14日に開かれた政府税制調査会(首相の諮問機関)の法人課税DG(ディスカッショングループ)では、「租税特別措置」の見直しとともに、「減価償却制度」の見直しが検討された。
  現在、建物の償却方法については「定額法」のみだが、機械や装置などについては、「定額法」または「定率法」を任意に選択適用できる。今回、この「定率法」を縮小・廃止する案が浮上している。
  減価償却とは、固定資産が長期にわたって収益を生み出す源泉であり、その取得に要した金額が将来の収益に対する費用の一括前払いの性格があることから、その使用または時間の経過に応じて徐々に費用化する仕組みだ。その方法として、(1)毎年均等額の減価償却費を計上する「定額法」と、(2)毎期首の未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する「定率法」の2つの方法がある。現在、企業は機械や装置などの設備投資にかかった費用を計上する場合、「定額法」と「定率法」のどちらかを選択適用できるが、長い目で見れば、どちらも納める税金の総額は変わらない。
  ただし、「定額法」は毎年の税負担が一定だが、「定率法」は初期段階での生産性が高い減価償却資産について適合する方法といわれ、投資後の当初の費用計上を定額法よりも大きくすることで、税の初期負担を軽くすることができる。
● 節税効果による任意選択は是正されるべき
  見直しに当たっては、「機械装置等の減価償却方法の選択の柔軟性は、その資産の使用実態に合わせた適切な減価償却費の計上を目的とするものだが、法人課税において減価償却方法の選択制を認めている結果、その時々の損益状況に応じた節税効果の観点から選択される場合が少なくなく、節税効果によって減価償却方法が選択される状況は税制本来のあり方からみて是正されるべきではないか」との意見が出された。
  さらに、適用設備に要件が課されているわけではないため、収益力の低い投資など非効率な投資を助長する結果となっているのではないか、との意見もあった。
  これらを踏まえ、資産の使用実態を考慮しない法人の任意による減価償却方法の選択の可能性は縮減していき、「定額法」に統一すべきとの案が出ている。
  「定率法」を廃止すれば、当初は企業負担が増え、法人税収は年間で最大5,000億円前後増えるという。今後の議論の行方が注目される。
  
浅野 宗玄(あさの・むねはる)
株式会社タックス・コム代表取締役
税金ジャーナリスト
1948年生まれ。税務・経営関連専門誌の編集を経て、2000年に株式会社タックス・コムを設立。同社代表、ジャーナリストとしても週刊誌等に執筆。著書に「住基ネットとプライバシー問題」(中央経済社)など。
http://www.taxcom.co.jp/
○タックス・コム企画・編集の新刊書籍「生命保険法人契約を考える」
http://www.taxcom.co.jp/seimeihoujin/index.html
  
2014.04.28
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