>  今週のトピックス >  No.2819
大手損害保険会社が企業向け地震保険料を引き上げ
● 加入率は10%未満ながら、支払い保険料は年間1,000億円規模
  東京海上日動火災保険と三井住友海上火災保険は、2014年7月から企業向け地震保険の保険料を引き上げることを決定した。内閣府の専門家作業部会が昨年、南海トラフ地震が起きた場合の被害額が最大220兆円にも上ると報告をまとめたが、これら政府の試算などを基に損害保険会社各社がリスクを再計算した結果、保険料を引き上げないと収支が合わないとの結論に達したからである。
  企業向け地震保険とは、オフィスビルや工場、店舗などが地震で損壊した場合に、損害額を補償する保険で、火災保険の特約(例:地震保険危険補償特約)として加入するのが一般的である。ただ、保険料が高いため、多くの企業は企業向け地震保険への加入をためらっているのが現状で、地域差はあるものの加入率は10%未満に留まっている。しかしながら、加入している企業などが支払う保険料は年間1,000億円規模に上る。
● 東日本大震災の翌年を上回る保険料の引き上げ幅
  東京海上日動火災保険は全国平均で17%程度、三井住友海上も5〜10%程度地震保険料を引き上げる。損保ジャパンは2015年度以降に地震保険料の引き上げを行う予定。日本損害保険協会によると、大手損害保険会社は東日本大震災時に約6,000億円の保険金を支払ったため、翌年に企業向けの地震保険料を1割程度引き上げたとのことだったが、今回は全体でそれを上回ることとなった。
  損害保険会社の企業向け地震保険の新規引き受けは個別の対応となっているのが現状である。収支を考えると保険料の引き上げは致し方ないかもしれないが、加入率10%未満という低さを考えた場合、顧客企業が利用しやすいよう免責の上限金額を引き上げる(例えば免責金額を100万円にする)ことで、保険料を抑えるなどの手段も検討してはどうだろうか。
主な企業向け地震保険
保険会社名 特約名 保険料改定幅
(全国平均)
日本興亜損保 地震危険補償特約 2015年度改定予定
(2014年9月合併)
損保ジャパン 特定地震危険補償利益保険
地震デリバティブ
地震危険補償特約
東京海上日動火災 地震危険担保特約 17%
地震危険補償特約
三井住友海上火災 地震危険補償特約 5〜10%
※ 各社新規契約申し込みは個別対応
※ 特定地震危険補償利益保険および地震デリバティブは震源が一定地域内の地震に備えた地震保険
  
伊田 賢一 (いだ・けんいち)
株式会社FPウィム 代表取締役、株式会社WINKS 代表取締役
CFP®認定者、一級ファイナンシャル・プランニング技能士
証券会社3社に勤務の後、2002年に独立系FPとして活動開始。独立系FP会社役員を経て、2007年に相談業務を中心としたFP会社として株式会社FPウィムを設立。2010年には多角的なFPサービスの提供を目的とした株式会社WINKSを設立。相談者の心の内の心配ごとをいち早く見つけ、個々人の夢や目標に応じたマネープランニングを提案し、実行援助、管理、見直しに至るまで包括的なサービスを提供している。個人や企業の相談は月平均30件、講演、セミナーも年間60件を超えるなど、幅広いファイナンシャル・プランニング業務を行っている。さいたま朝日に「家計の知っ得」、ホケモンに「保険の基礎知識」などを連載中。おもな著書に「うかる!FP技能士2級」「うかる!FP技能士3級」「うかる!証券外務員2種」などがある。
NPO法人日本FP協会 埼玉支部副支部長、 マネーカフェさいたま代表、埼玉県金融広報委員会アドバイザー。
株式会社FPウィム http://fpwim.com/
  
  
2014.05.19
前のページにもどる
ページトップへ