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労災による死亡者数1,030人、五輪を控え求められる防止策
● 労働災害による死亡者数は2年ぶり減少も1,030人にのぼる
  厚生労働省は5月16日に、平成25年の「労働災害発生状況」を公表しました。
  平成25年は、死亡災害、死傷災害、重大災害の発生件数が、4年ぶりにいずれも前年を下回りました。死亡災害は2年ぶり、死傷災害、重大災害は4年ぶりの減少となります。
  それぞれの発生状況は以下の通りです。
1.死亡災害発生状況 ※1
  労働災害(労災)による死亡者数は1,030人で、平成24年の1,093人に比べ63人(5.8%)減と2年ぶりに減少しました。死亡者数が多い業種は、建設業:342人(前年比25人・6.8%減)、 第3次産業:282人(同15人・5.1%減)、製造業:201人(同2人・1.0%増)です。
  死亡者数は高度経済成長期の真っただ中の昭和36年に年間6,712人とピークになりました。換算すると、労働の場で1日平均約18.4人以上もの人命が失われていたことになります。
  その後、増減を繰り返しながら、労働安全衛生法が施行された昭和48年前後から大幅に減少し、平成25年には1日平均約2.8人にまで改善されています。とはいえ、1年間で1,030人に及ぶ尊い命が労働の場で失われています。働くことで生命が脅かされたり、健康が損なわれるようなことは、本来あってはならないことです。
2.死傷災害発生状況 ※2
  労働災害による死傷者数(死亡・休業4日以上)は11万8,157人で、平成24年の11万9,576人に比べ1,419人(1.2%)減と4年ぶりの減少となりました。
  また、死傷者数が多い業種は、第3次産業:5万1,420人(前年比430人・0.8%減)、製造業:2万7,077人(同1,214人・4.3%減)、建設業:1万7,189人(同116人・0.7%増) 。死傷者数の増加が多い業種は、陸上貨物運送事業:356人(2.6%)増、建設業:116人(0.7%)増、交通運輸業:72人(2.3%)増となりました。
3.重大災害発生状況 ※3
  一度に3人以上が被災する重大災害は244件で、4年ぶりの減少となりました。死傷者数では、特に製造業、交通運輸業、建設業で大きな減少が見られました。
● 建築現場での事故のほか、社会福祉施設での労災も増加
4.事故の型別による死亡災害・死傷災害発生状況
  (1)死亡災害
       もっとも多かったのは、建設現場の足場など高所からの「墜落・転落」による災害が266人、機械などによる「はさまれ・巻き込まれ」が132人と、この2つで全体の4割を占めます。そのうち、「墜落・転落」は過半数が建設業で発生、「はさまれ・巻き込まれ」の約半数が製造業で発生しています。
  (2)死傷災害
       最も多いのは、つまずきなどによる「転倒」が2万5,878人、続いて足場などからの「墜落・転落」が2万182人、機械などによる「はさまれ・巻き込まれ」が1万5,276人となり、これらの合計が6万1,336人と全体の過半数を占めます。
  加えて、近年の傾向としては社会福祉施設での災害の増加です。社会福祉施設での死傷者数は6,831人(前年比351 人・5.4%増)と大幅に増えており、このうち、施設利用者の移動介助中等の「動作の反動・無理な動作」と入浴介助中等の「転倒」災害が全体の約3分の2を占めています。
  今後は、2020年のオリンピック・パラリンピックが東京で開催されることに伴い、建設投資額が増え工事量の増加も見込まれるため、建設現場などでの災害も、それに比例して増えることが予想されます。労働災害を減らすためにも、墜落時に衝撃の少ないハーネス型の安全帯の普及など、具体的な災害防止対策が必須となるでしょう。
※1 死亡災害報告をもとに死亡者数を集計
※2 労働者死傷病報告書をもとに死傷者数を集計
※3 重大災害報告をもとに一度に3人以上の労働者が業務上死傷または病気にかかった災害件数を集計
なお、※1〜3の件数には通勤中に発生した災害の件数は含まれません。
参考 厚生労働省「平成25年 労働災害発生状況の概要」
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000046019.html
  
半田 美波(はんだ・みなみ)
社会保険労務士
みなみ社会保険労務士事務所 代表、株式会社サンメディックス 代表取締役
診療所で医療事務職として勤務した後、医療法人事務長、分院の設立業務担当を経て、2003年に医療機関のサポート会社・(株)サンメディックス設立。2004年にみなみ社会保険労務士事務所を設立。医療機関に詳しい社労士として知られる。
  
  
2014.06.02
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