> 今週のトピックス > No.2832 |
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「軽減税率は効率の悪い制度」と反対する東京税理士会
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![]() ● 軽減税額の9割近くは低所得者世帯以外の世帯へ
平成27年に予定されている消費税率10%引上げ時に、低所得者世帯(年間総収入金額248万円以下の世帯)に対する配慮等から軽減税率の導入が検討されているが、東京税理士会は、以前より表明している「軽減税率制度は極めて効率の悪い制度として強く反対する」という姿勢を改めて示した。「同制度の導入は、低所得者世帯に対する効果が限定的であるのに対して、税収減収額=逸失税収額が多額であるほか、軽減税率対象品目の選定や中小企業者の事務負担、中小特例の形骸化といった観点からも問題のある制度だ」と反対理由を示している。
同会によると、酒類・外食を除く「全食料品」に対して、消費税率10%時に軽減税率5%を適用した場合の逸失税収額を1兆3,056億円と試算。このうち、低所得者世帯に効果が及ぶ軽減税額の総額は1,632億円と算出され、残りの87.5%に当たる1兆1,424億円は、低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税額となり、低所得者に対する負担軽減策としては、極めて効率の悪い制度だと指摘している。 また、軽減税率適用対象品目を、飲料や菓子等を除く「基礎的食料品」に限定した場合の逸失税収額を8,352億円と試算。このうち、低所得者世帯に効果が及ぶ軽減税額は全体の1割強の1,056億円に過ぎず、残りの7,296億円(逸失税収額の87.4%)は、低所得者世帯以外の世帯に対する軽減税額となり、低所得者に対する負担軽減策としては、前述の全食料品と同様に極めて効率の悪い制度だとしている。 ![]() ● 低所得者対策は社会保障制度の仕組みの中で実施すべき
つまり、軽減税率の導入は低所得者等に対する「逆進性を解消するため」とされているが、軽減税率の対象とされる物品、サービスは、高額所得者等も購入することができる。このため、高額所得者等が受ける軽減税額は低所得者等が受けるそれを大きく上回るとも考えられる。
他方、軽減税率を適用した場合、事業者の事務負担が増大する。また、事業者によっては、消費税還付申告のために課税事業者(本則課税)を選択せざるを得ない状況を誘引し、結果として、小規模事業者に配慮した事業者免税点制度や簡易課税制度が形骸化する。さらに、軽減税率の対象品目の決定の困難性があることなどから、東京税理士会は「軽減税率制度は、消費税率10%時に導入することは適当ではなく、現行の単一税率を維持すべきだ」と主張する。 東京税理士会はさらに、「低所得者対策は消費税等の制度の仕組みの中でなく、社会保障制度の仕組みの中で実施すべきだ」と指摘する。逆進性の緩和としては「消費税の給付付き税額控除制度」を提案。同制度は軽減税率に比べて事務負担も少なく、給付も低所得者層に限定されるため、歳出を低く抑えられるという。同制度の課題がマイナンバー制度※ 施行によって払拭されるまでの間は、簡素な給付措置を一定期間継続することを提案している。 ![]()
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2014.06.09 |
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