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「復興特別法人税の前倒し終了」と生命保険提案
● 復興特別法人税の課税期間の1年前倒し終了
  平成23年度税制改正により、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する事業年度において適用予定であった、復興特別法人税の課税期間が1年間前倒しで終了となり、平成26年4月1日以降開始の事業年度から適用されなくなった。基準法人税額に10%の税率を乗じて算出していた復興特別法人税の納付が不要となり、これにより、法人所得課税の実効税率も低下した。
● 実効税率とは何か
  法人所得課税の実効税率とは、法人に対して課される法人税、法人住民税、法人事業税および地方法人特別税をすべて加味した課税所得に対する税負担率をいう。ただし、法人事業税および地方法人特別税が損金算入されることを考慮すると、単純に税率を合計した「表面税率」とはならず、次の計算式にあてはめて算出する。
表面税率(法人税率+法人住民税率+法人事業税率+地方法人特別税率)
1+法人事業税率+地方法人特別税率
  以下は、実効税率の計算例である。
法人税 25.50%
法人住民税 5.28% 法人税率25.5%×住民税超過税率20.7%
法人事業税 3.26% 法人事業税超過税率(東京都外形標準課税法人) 損金算入可
地方法人特別税 4.292% 法人事業税標準税率2.9%×148% 損金算入可
表面税率 38.33% 法人税、地方法人特別税、法人事業税、法人住民税の合計
実効税率 35.64% 表面税率38.33%÷(1+損金算入可の税率の合計7.552%)
必要倍率 1.56倍 1÷(1−0.36)
  「損金算入可」の法人事業税および地方法人特別税の税率の合計7.552%を考慮して、実効税率は35.64%となる。なお、実効税率は、法人の所在地による地方税率の違いや法人の所得金額等によって異なるので、上記の計算値は目安の値である。
● 法人への保険提案は、実効税率を考慮した保険金額で
  法人が保険金を受け取った場合、雑収入(保険料積立金または前払保険料がある場合はそれらを控除した金額)として課税対象となり、法人税等が課税される
  そのため、法人に対して提案を行う際には、実効税率をもとに、課税分を考慮した保険金額としなければならない。このための「必要倍率」を「1÷(1−実効税率)」によって算出し、“必要な保障金額×必要倍率”にて算出された保険金額を提案する必要がある。仮に税引き後で1億円が必要であれば、平成26年4月以降開始の事業年度においては、1億円×1.56=約1億5,600万円の保険金額が必要である。
● 復興特別法人税の1年前倒し終了による影響
  復興特別法人税率を加味した法人税率は、25.5%×(1+0.1)=28.05%であった。そのため、実効税率は38.01%となり、必要倍率は1.61倍であった。
  復興特別法人税の1年前倒し終了により、実効税率が35.64%になり、必要倍率も1.56倍に低下した。法人に対し生命保険を提案する際は、実効税率に即した保険金額の提案が必須であるとともに、過去の契約についても見直す必要がある。法人税の更なる減税もマスコミを賑わしており、今後の法人税の改正動向について、法人のお客様へのタイムリーな情報提供を、生命保険提案の切り口とすることが可能である。
※実際の課税状況は、退職金の支払いなど当該法人の当期の収支状況によって異なります。
参照 : 財務省ホームページ「法人税など(法人課税)に関する資料(平成25年5月末現在)」
      http://www.mof.go.jp/tax_policy/summary/corporation/index.htm
  
古賀輝行(こが・てるゆき)
古賀社労士・FPオフィス 代表
〒169-0075
東京都新宿区高田馬場2−9−1 天野ビル3階
E-mail:kogasrfp26-22@ae.auone-net.jp
1951年2月22日生まれ(63歳)。損害保険会社に26年間、生命保険会社に12年間勤務後、2011年退職を機に個人事務所「古賀社労士・FPオフィス」を立ち上げる。
客先企業の顧問社会保険労務士としての業務のほかに、ファイナンシャル・プランナー(FP)として、ライフプラン、生命保険、社会保険の相談業務やセミナー講師を行っている。
  
  
2014.06.16
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