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国の借入金残高と今後の課題について考える
● 平成25年度の国の借金は1,024兆円超と過去最大に
  5月9日の財務省の発表によれば、平成25年度末の国の借金(国債及び借入金)の合計残高は1,024兆9,568億円となり、過去最大の金額を更新している。新聞等では、「国民一人あたり約806万円(人口1億2,724万人)の借金」と報道された。この金額の大きさは、近年の恒常的な財政赤字が原因であるが、社会保障と税制改革・人口(労働力)問題・貿易赤字と経常収支の動向など、国の将来に係る重要課題ニュースとの関連性も踏まえて数字を見直してみたいと思う。
  財務省では、毎年の一般会計予算の補足資料として財政関係資料を作成し、ホームページに掲載している。その中に国債等を借入金として国の財政状況を家計に例えた解説があるので、同じ手法で独自に借入金等を算出したのが下記の表である。平成26年度予算と平成26年度末借入金残高(同省試算。図中※1)を考慮して2年分を作成した。
※表をクリックすると別画面で大きく表示されます。
● 年収に見合わない借入をしているようなもの!?
  上記のように国の財政を家計(年収360万円)に例えると、ローンを返済しながら新たな借り入れをしているようなものといえる。公債以外も含めた平成26年度末の借入残高は前年より増加するとみられており、一人当たりの金額は人口減少(1億2,695万人)の影響もあって、901万円と大きくなる試算だ。一方、国の収入をベースに計算する家計のローン残高図中※2 は減少し、その負担感は低下するとの予想だ。
  ただし、平成26年度の借入残高の減少予想(負担感の低下)の理由は、収入の増加と借入残高の伸び率に起因する。つまり、この結果となるには、「借入残高の伸び率(≒利率)を 税収等の伸び率(≒成長率)が大きく上回ること」が条件となっている。ちなみに平成26年度は税収等が対前年比115.2%伸展しているのに対し、公債残高の伸びは104%(借入金合計では111.6%)である。わずかながら「利率<成長率」の傾向があるとも言えるだろうか。
  このように家計に置き換えると、この年収でこれほどの金額の借入は無理があり、まして追加の毎月借入などは現実的にはありえない。それほど国の財政状況は厳しいということが分かる。これをふまえ、今後の財政再建の課題として、新たな借入金(赤字国債発行)を抑制してプライマリーバランスをとること、そして長期金利を上回る経済成長を実現していくことなどが鍵となることがよく理解できる。このために、国は対策として必要な経済成長のための新しい産業構造・人口(就業)構造・社会構造構築への取組みや、これらに加えて“双子の赤字(経常赤字と財政赤字)”が日本の危機的問題とならぬよう、目前のデフレ解消から中長期的な戦略づくりを推進しつつある。今後、これらの選択・実践が功を奏し、財政の赤字はもとより、税金や社会保険料を負担する家計の実質所得も着実に潤してくれることを期待したい。
参考 財務省:日本の財政関係資料
     http://www.mof.go.jp/budget/fiscal_condition/related_data/
※文中の人口は、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」より抜粋
2014.06.16
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